2話

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「あの…おっしゃられている意味が…」 「私と結婚しないかと言ったんだ。」 「でもあの…社長、私の事御存知なかったんじゃ…」 さっき名前聞かれたばっかりだし、認識されてなかったって事だよね? そんな相手と結婚…? 「ああ、君の事はついさっきまで知らなかった。なるべく社員については把握しようと思っているが、これだけの大人数だと正直中々難しい。だから、この結婚は愛だの恋だのというものとは無関係だ。」 「無関係…」 じゃあ、一体何故? 「言うなれば、これはお互いの利益の為の、結婚という名の契約だ。」 「契約…でも、社長が私と結婚することに何のメリットが?」 「君も知っているとは思うが、前社長…私の父は、まだまだ働ける年齢であったのにも関わらず、去年早期引退をし私に後を継がせた。」 そう、あれには正直驚いた。 だって、まだ60歳になる前で、健康上の問題があるとかでもなかったみたいだし。 「その父親から、お前ももういい年だからと、最近やたら縁談の話が来ているんだ。全く、俺に会社を譲って自分は呑気に隠居生活を送っておいて…」 あ、一人称が俺に変わった。 もしかして、素が出てるのかな? そういえば、社長って35歳ぐらいだっけ。 「俺は正直結婚する気が無いんだ。君の前で言うのも何だが、女性に対してあまりいい感情を持っていない。」 「はぁ…」 「だがこのままだと、煩わしくて仕方がない。何かいい手は無いものかと考えていた所に、さっき君達の話が聞こえてきたんだ。」 「それで、私と契約結婚ですか?」 「ああ。君なら許容範囲だ。それで条件だが、期間は1年だ。同じ家で暮らす事にはなるが、部屋は別々に用意しお互いの事には一切干渉しない。君が男を作ろうが自由だ。ただ、仕事は辞めてもらうことになる。君も働き辛いだろうしな。その代わり、毎月生活費として今の給料の倍は支給する。離婚後の生活の保障も、慰謝料という形で充分するつもりだ。再就職するというなら、伝手を使って援助しよう。どうだ、悪い条件ではないと思うが。」 「…」 確かに悪くない条件だけど… 本当にこれを受けてしまっていいんだろうか。 さっきまで、誰かにフリをお願いしてでもって思っていたのに、いざ本当にそれをやるとなると、嘘をついてまでやることなのか迷いが出てくる。 「どうした?何か条件に不満があるなら言ってくれ。」 「そういうわけではないのですが…明日まで待っていただいていいでしょうか。少し、考えたくて。」 「構わない。返事が決まったら、ここに連絡してくれ。プライベート用の電話番号だ。」 「分かりました。」 応接室を出てフロアへ戻ると、由香が慌てて駆け寄って来た。 「大丈夫?クビとかになってない?」 「大丈夫だよ。全然仕事とは関係ない話だったから。」 あれ? 契約だから、ある意味仕事かも…?
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