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5話
あれから社長はすぐに動いてくれたようで、なんとか再来週小さな式場を押さえる事が出来た。
取り合えず身内だけの小さな式を挙げて、後からもう一度仕事関係や友人なんかを呼んだ式を挙げることになるのだそう。
2回もしなくても…って正直思ったけど、私は普通のOLだから良くても、やっぱり社長という立場ではそうもいかないらしい。
1年しかない結婚生活の為に2回も式を挙げることになって、何だか申し訳ない。
費用も全部社長持ちだし。
社長は気にしなくていいと言ってはくれたけど…
「…おい、聞いてるか。」
「え…?あ、すみません。ちょっと考え事してました。」
「君のドレスの事なんだから、君が決めてくれないと困るんだが。」
「すみません…」
折角時間を空けて一緒に見に来てくれたんだから、さっさと決めないと。
社長に余計な時間を使わせるわけにはいかない。
「私はこれで。」
「一番安いドレスだが…」
「安いとは言っても、レンタルでこの値段ですよ?私にはこれで充分です。」
「誰がレンタルだと言ったんだ。」
「え…まさか買うつもりなんですか?!」
「当たり前だろう。」
たった1年の契約結婚なのに?
勿体ないし、買った所でどうするつもりなんだろう。
これはちょっと、社長を説得するしかない。
「社長、購入は駄目です。レンタルで構いません。」
「何を言ってるんだ。レンタルなんて…」
「いいえ。よく考えてみてください。たった1年の契約結婚ですよ?買った所で無駄になります。」
「それはそうかもしれないが…」
「レンタルで充分です。むしろレンタルしか駄目です。私の我が儘で式を2回も挙げることになったんですし、ドレスにまでそんなお金をかける必要はありません。」
レンタル2回しても購入より十分安いし、ここのドレス一番安くても普通より絶対高いと思う。
それに、後で挙げる大きな式はお色直しも当然あるはず。
チラッと見たドレスはどれもこれもレンタル料すら高かった。
全部レンタルでもすごい金額になりそうなのに、ウェディングドレスを購入なんてしちゃったら恐ろしい金額になりそう。
考えただけでも冷や汗が出る。
「…分かった。君の好きなようにしなさい。」
「ありがとうございます。」
良かった、引いてくれて。
とりあえず私のドレスは決まったから、次は社長の番か。
社長は何着ても似合いそうだよね。
スタイルいいし、ちょっと冷たそうには見えるけど端正な顔立ちしてるし。
…あれ?
私が横に並んで大丈夫かな?
今更心配になって来た。
地味すぎて霞むんじゃないの私。
ヘアメイクさんに頑張って盛ってもらわなきゃ、つり合いが取れないんじゃ…
何その悲しい現実…
「帰るぞ。」
「え?社長の衣装は…」
「もう決まった。」
早っ。
いつの間に。
「ほら、車に乗りなさい。」
「あ、はい。ありがとうございます…」
ああ…やっぱり慣れない…
ここに来るときも社長の運転する車で来たけど、乗り降りする時に一々ドアを開けてくれるから、恐縮しっぱなし。
社長ぐらいになると、こういうエスコートも普通の事なんだろうなぁ。
やっぱり住む世界が違うんだわ。
たった1年だけど、大丈夫なのかな私…
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