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「それなら、うちに住む? うちならこの学校から近いし、お金の心配もしなくていいし」
「でも、その分、おじさんに負担が掛かります」
「俺のことは気にしなくていいから。退魔師の頃から貯めていた貯金が、たんまりあることだし。
その代わり、ひめちゃんが家事をやってくれると助かるかな。俺、こう見えて家事とか面倒くさがるタイプだし」
「いいんですか? それだけで……」
「それと、ひめちゃんが俺のことを『先生』って呼んでくれるならね。さすがに、この歳でおじさんはキツいな」
わざとらしく落ち込んだ振りをすると、ひめはクスクスと笑ったのだった。
「わかりました。お言葉に甘えてお世話になります。『先生』」
「引っ越す時に連絡して。『先生』が迎えに行くからさ」
「はい!」
そうして、嬉しそうに手を振りながら去って行ったひめを見送ると、職員室に戻る。
職員室に入るなり、すぐに教頭先生が駆け寄って来たのだった。
「夕凪先生、先程、お渡しした名簿ですが……」
「わかっています。差し替えればいいんですよね」
自席に戻るなり、善弥は机の上に置かれたままの名簿を手に取る。
職員室の片隅にあるシュレッダーに近づくと、その中に名簿を入れた。
「柊ひめ」の名前が入っていない名簿は、音を立てながら細かく刻まれると、紙屑へと変わっていったのだった。
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