50の男

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50の男

 止め処なく振り続ける雨を見て空を見上げると、灰色の分厚い雲にそのまま全てが覆い尽くされるんじゃないかと思った。 「え?どういうことですか?」  小さな部屋に通されて目の前でレントゲンを見せられながら男より少し若いくらいの医師が書くメモを見つめる。 「この部分黒く見えるのがわかりますか?明日から詳しく検査をしないとわかりませんが……」  妻が倒れたと電話があったのはついさっき。  すぐに行けと部長に言われとにかく鞄と財布だけを持って文字通り走ってきた。  ゼェゼェ息を切らしながら受付で妻の名前を告げ、案内された病室で妻は静かに眠っている。  何だ。過労か?寝不足か?  あの点滴が終わったら帰っていいってやつだろう?  そういえば、携帯を机の上に置いたままだった。  それならそれだけ取りに戻って今日はゆっくり外食にしよう。  たまには妻の食べたいものをのんびり食べるのもいい。  ベッドの脇にあった簡素なイスに座って走ったせいで汗をかいた額をハンカチで拭う。  喉もカラカラで飲み物でも……と立ち上がると足がもつれてガタンと大きな音を立ててしまった。 「すまん」  とっさに謝ったが妻はまだ眠っている。
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