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花ひらく
ポカポカと暖かな陽気の中、老人は木の下で転がってうずくまる少年を見つけた。
「シド」
声を掛けても少年は動かない。
その頬に触れた老人はそっと目を閉じた。
「こんなに身を削ってしまって……もう逝ってしまったのか」
身なりもボロボロになった少年を抱えて冷たくなったその手を握る。
「シド。見えるか?お前自身を分けた種はじきに芽を出して花を咲かせる。お前はそれが見える場所に逝ったのだな?」
老人が目を閉じて少年を抱き締めると、少年はパッと色とりどりの光になって辺りに飛び散った。
勢いよくあちこちに飛んでいく光を老人はゆっくり目を開けて見つめる。
「お前の種は見事な花を咲かせるだろうよ」
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