7人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「ねぇ！雪！」
明るい弾むような声が聞こえて空を見上げると、頬に冷たいそれが触れた。
綺麗なんて思えないその雪で心が踊ることもない。
ただ、中途半端に電灯の灯った街に埃でも舞っているかのような雪。
そのままゴミで埋め尽くされるような気になりながら上を向いたまま目を閉じる。
それが当たる度に冷たいと思っていたのに、時間が経つと特に何も感じなくなった。
「あの人、どうしたんだろう？」
そんな声が聞こえてきても、目を開ける気にすらならない。
笑えばいい。
バカにして、自分の方が幸せだと安堵すればいい。
目を閉じたままそれでも動かないでいると、不意に誰かにコートを引っ張られた。
無視をしていても、それを引く手は止まらない。
やっと目を開けて視線を落とすと、薄汚れた茶色のコートを着た少年が女を見上げていた。
「何？」
声をかけても少年は返事もしない。
ただ、その緑色の目は街灯の光を受けて少し輝きながらしっかりと女を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう！