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「こんな時間に……お母さんは?」
周りを見ながらしゃがんで尋ねると、少年は右手を差し出す。
その上にはゴマのような茶色くて丸みのある小さな種。
植物なんて小学生の時に育てたアサガオくらいなのにそれはなぜか種だとわかった。
受け取ると、少年はにこりと笑って去って行く。
女はその種を大事に持って帰り、空いていた食品トレーにティッシュを敷くとそっとその種を乗せた。
「明日ポットとか土を買ってくるからね」
種に話しかけて微笑む。
不思議とそれまでのやるせなさも、惨めさも軽くなったような気がしていた。
気に入った真っ白なポットに土を入れてそっと種を蒔く。
だが、それはいつまで経っても芽が出ることはなかった。
「水をやり過ぎたのかしら?」
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