20の男

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20の男

 空気は肌を刺すような冷たさで身を竦めたくなるのに、やたら青い空を見て何で涙って流れないんだろうと思った。 「お前さ、あの子のことどう思う?」  肩を組まれて指で示されたその方を向くと、明るい茶髪でゆるいウェーブのかかった髪を揺らしながら笑っている彼女が居た。  入学当初からかわいいと思っていてこれまで何度も話しかけようとしたもののそんな勇気はなく、近くの席に座ってただ眺めていた女の子だった。  最近やっと同じ授業で、しかも、同じグループになって挨拶をするようになった。 「あの子、かわいくね?」  高校からの同級生でつい最近、彼女と別れた友人はやっと男の肩から腕を外してほぅっと息を吐く。その白い息はハートにでもなったんじゃないかってくらい熱い眼差しを彼女に向けて。 「ここ最近、いいなぁって思ってたんだよねぇ」  うっとりとしたその表情を見てまた彼女の方を見ると、彼女もちょうどこっちを見て手を振った。
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