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「おはよ!」
「おはようございます!」
お、と言う前に友人はキラキラした目で彼女の手を握る。
びっくりしたような彼女はすぐに笑みを見せて
「おもしろい人!友達?」
と首を少し傾けて、2人はそのまま話し始めた。
男が2年かけてできなかったそんな彼女との何気ない会話を一瞬で。
「なぁ、聞いてるか?昼、一緒に食おうって!」
目の前で手のひらを上下に動かされてハッと現実に戻る。
「いや、俺、急ぎのレポートあるから」
口から出た嘘に心の中で舌打ちしつつ、そう?と笑顔でまた彼女と話し始める友人を見た。
「ごめん。寄るとこあった」
2人から小走りで離れてハァと息を吐く。
見上げた空はなぜか澄んだ青で男は目を細めた。
しばらくそうしてから前を向くと、目の前には雑に切ってバラバラな黒髪の少年がじっとこっちを見ている。
振り返っても誰か居る訳ではない。
「えっと……」
男が声をかけると、少年は手のひらを差し出した。
そこには細長い焦げ茶色の種。
首を傾げてしゃがむと、少年は真っすぐ男を見る。深い緑の目はしっかりと男を見ていた。
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