40の女

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40の女

 年甲斐もなくブランコに座って仰け反るように空を見上げる。  灰色というよりもう黒にも見える空は今にも雨が降り出しそうで、それなら思いっきり全てを洗い流すくらい激しく降って欲しいと思った。 「残念ですが……流産ですね」  診察のイスに座りながら目の前に出されたエコー画像を見つめる。  先週まではあったあの小さな白い影はなくなっていて、やたら黒く見えるそれが気になった。 「恐らく出血は流産によるものです。これが出血した部分です」 「え……」  うまく言葉が出て来ない。 「まだ妊娠初期なのでよくあることなんです。誰のせいとかじゃなくて原因は赤ちゃんの側にあることが多いですから……あまり自分を責めないで下さいね?」  先生の言葉もうまく耳に入って来ない。  何を言っているの?  赤ちゃんは何cm?  明日には心拍が確認されて、母子手帳を貰う手続きの説明……そのはずでしょう?  結婚してやっと授かった命。  気にし過ぎと言われるくらい気を遣った。  だから、今日も出血なんて急いで会社を早退して病院に向かったのよ。
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