歌にのせて

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私が、あいつを、というかああいう人を好きになれないのは、恋愛をしないのは、元彼が原因。元彼と瑞野君は、性格とか行動とか、すごく似ている。元彼は、クラスの中でもすごく明るい人で、私と違って友達もたくさんいたし、勉強もそれなりにできてた。中二の夏、私は元彼に告白された。私は、憧れが恋心に変わって元彼のことを好きだったから、うれしくて付き合うことにした。半年は、付き合ってたと思う。だけど、中三の春、元彼と元彼の友達が話していたことを、たまたま聞いてしまった。その話は、最低なもので……。 『琴音ってクラスだとすごくおとなしいけど俺と二人の時はあいつから寄り添ってくるぜ?』『うっそ。まじで?』『本当、本当』『でも、遊びで付き合ってるなんてひどいよなぁ』『いいだろ、別に。あいつも俺といられて楽しいだろうから(笑)。』『確かに!(笑)』『アハハ!』 という会話だった。私は、その話を聞いてすごく悲しかった。私は、元彼のことが本当に好きだった……。話を聞いた次の日、私から別れてほしいと元彼に言った。そしたら、『いいけど、理由教えて』って言われた。その時の私は、昨日のことを思い出したくなくて理由は、言えなかった。元彼を振った日、早退してひたすら泣いた。私は、その日を境に人を主に男子を信じられなくなった。そして、恋することが怖くなって、恋愛に興味を持たなくなった。明るくて、私に近づいてくる人には必ず裏がある、と思ってしまうようになった。だから、瑞野君をというかああいう人が嫌いなんだ。 「琴音、大丈夫?また、あれ思い出してた?」 優奈か。心配かけちゃってる。 「うん……。」 「琴音の言ってる奴のことなんて忘れちゃいなよ。」 「優奈、もう慰めなくていいよ……。」 元彼のことを思い出すと優奈は、絶対に慰めてくれる。それが、少し心地いいけど、思い出した日は、放っておいてほしいと思ってしまう。 放課後。 みんな、帰ったり、部活に行ったりしている。 誰も屋上にいない時間になったので、一人で屋上に向かった。私には、元彼のことを思い出して、気分が落ち込んだ時に必ずすることがある。それは、歌を歌うこと。その時によって歌う曲は、違うけどね。流行りの曲や、歌い手さんの曲とかだよ。今日は、悲しめの曲を歌った。歌うと自然に涙が出てくる。 つらい過去を忘れられずに囚われて、前に進めない自分の不甲斐なさ、偶然あの時の会話を聞いてしまったこと、色々なことを思い出して、色々な思いが溢れてきてしまうから泣いてしまう。歌った後は、まっすぐ家に帰る。 そして、たいてい次の日は学校を休む。
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