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俺は台所からコップに水を汲んで戻って来たが、爺さんは虚ろに薄目を開いたままで起き上がろうとする気配もない。
「起こしてやろうか?」
俺は返事も待たず爺さんの体を抱き起こす。
あまりに軽く痩せた体に衝撃を受ける。
コップの水を爺さんの口元に傾ける。
爺さんは、唇を開くのにさえ時間がかかる。
やっと一口、水を飲む。
その間にも花は微かな音を立て白い大きな花びらを開き始める。
爺さんは一口、水を飲んでは、さもさも疲れたような息をして、また一口、また一口、ゆっくり水を飲む。
骨と皮ばかりの爺さんに水を飲ませながら、俺は遠い日の記憶をたどっていた。
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