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クラゲ王子 沼にハマる
やっぱりキャップを被っていたとは言え、真夏の日差しを浴びた髪はキシキシで。
これはちゃんとケアしなければ、と並んだボトルから何か良さそうな物を探す。
「ダメージケア、エキストラオイル、これでいいかな?」
職業上なにやら沢山のシャンプーやコンディショナーを使い分けているらしい。
いつものコンディショナーの後に追加で良さそうな奴を髪に塗りこめる。
「それにしてもどぎつい色だなー。」
真っ青に染まる両手をまじまじと眺めてからシャワーで洗い流す。
まぁ、匂いはいい匂いだし。
塗り込めた時の指通りも良かった。
少しパックするつもりで先に体を洗って、髪を洗い流す。
クレンジングして、細かく泡立てた洗顔料を顔に乗せた時だった。
「えっ!!!」
ドアの開く音と共に聞こえたのは琥太郎の大きな声。
「ちょっと!覗かないでよ!」
泡まみれの顔を慌ててシャワーで洗い流す。
やっと振り向くと裸の琥太郎がすぐそこにいた。
「何で!?」
「それよりお前、髪、いいの?」
「え?いいって、何が?」
「カラーシャンプー使ったんだろ?」
「え・・・」
慌てて浴室の鏡にシャワーをかけて覗き込む。
良く見なければ分からないが、確かに青。
「えっ!?だって、えっ!?」
持ち上げて良く見て見れば、ちゃんと書いてある。
「何でちゃんと正面に向けて置いとなかったのよ!!!」
理不尽なキレ方をしている晶は、両手を頭に当ててパニック状態。
濡れた晶の髪を一房取って見れば、まぁまぁしっかりと色が入っていた。
「シャンプーだし、一週間くらいで落ちるよ。どうせ休みだし、羽目外したと思って楽しんだら?」
「楽しめる訳ないじゃん!青だよ!?」
「黒髪に入れてるから良く見なきゃわかんねーよ。」
私公務員だから!
頭青いとか、ホントに無理だから!
慌ててもう一度シャンプーして何とか少しでも色を落とそうと念入りに流す。
その間に琥太郎はちゃっちゃと頭と体を洗って湯船に沈んだ。
「もうその辺にしとけよ?髪痛むぞ。」
「ねぇ、まだ青い?」
「だから晶が思う程じゃないって。」
「乾かさないと分かんないもんね。本当に一週間で落ちる?さすがに青髪で役所には行けないよ。」
「落ちるから。大丈夫。」
カラーシャンプーの一件で、晶はすっかりそっちに気を取られている。
こっちはさっきから全く別の事しか頭にないのを全く気付いていないみたいだ。
宥めすかして手を引くと、驚くほど躊躇なく浴槽に沈んでくれた。
「えっ?ちょっと!」
何かに気が付いてそう言われた時、彼女が逃げ出さない様、咄嗟に足で彼女を挟み込んだ。
「手!何で!?」
晶が声を上げたのはこっちか。
右手を湯船から出して、これ?とジェスチャーすると大きく頷いたから間違いなさそう。
「母ちゃんに聞いたら風呂のあいだだけなら外しても良いってさ。」
「本当に?」
疑わしいと顔に書いてあるけど、事実だから仕方ない。
まぁ、いいよな?って言う聞き方はしたけど、絶対にダメとは言わなかったし。
「まだ腫れてるじゃん。」
「いや、だいぶ引いただろ?」
「ちょっと動かさないでよ!」
「指が固まって浮腫んでるんだよ。親指以外は動かしてもいいだろ?」
そんな事言ったって、他の指を動かせば親指だって多少は動くのは仕方ない。
左手はこの状況に晶が気付いて逃げだそうとした時の為にスタンバイしておかなければならないし。
「やってあげるから!」
見るに見かねた晶が指を一本ずつ丁寧にマッサージしてくれる。
それはありがたい事だけど。
何だか違う事の連想がどうにも止められない。
「まだ浮腫んでる感じある?触った感じ全然ぷにぷにしてないんだけど。」
「もういいよ。ありがとう。じゃあ今度は俺がやってあげる。」
立てた膝に彼女のふくらはぎを乗せると、予想していた通りにジタバタしだす。
向かい合わせの位置では暴れる晶を抑えられずに、已む無く背後から抱き抱えて大人しくさせた。
うちの姫は恥ずかしがるフリなどではなく、いつだって全力だから手がかかる。
明日が辛いからといつかの例を持ち出して説得して、足首から膝裏までを丁寧に揉み解して行く。
くっつきすぎじゃない?そう言ってどんどん屈んで行くから、顎はもう水面に着いてしまいそう。
彼女が溺れる前に助けてあげなくては。
ポッコリ出っ張った1番上の背骨に口付ければ、瞬時に背を反るのは想定の出来事で。
顔を上げて振り向いたところを待ち構えていて唇を奪う。
その隙にガッチリと彼女のウエストを抱きこんでしまえば、後はこっちのペース。
たった2〜3日触れていなかっただけなのに、解放された右手で触れる彼女の肌はやたらと本能を刺激する。
漸くいつものペースが掴めたところで、ずるりと彼女の体を膝の上に引き上げた。
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