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「晶は、誰の彼女なの?」
「こた、ろ!」
「ちゃんと自覚して?」
もう既に抵抗する力などないと分かるまで、徹底的に責め立てられ、要約すれば、お前は俺だけのモノだ、と脳と体に叩き込まれ続ける。
余裕なんかとっくに無くなってるのに、全然労わろうともしない右手だけが気になって仕方ない。
何とか琥太郎の右手に手を伸ばして、辛うじて小指をぎゅっと掴んだ。
「手、だめ、使っちゃ。」
揺さぶられ続け、もうほとんど目も開いていない晶の小さな声に、琥太郎はハッとしてようやく動きを止めた。
「こたろ?」
突然動かなくなった琥太郎に晶が細く目を開ける。
強姦紛いの事をされているのに、心配して空いている左手でそっと琥太郎の腕をなぞった晶を見たら。
猛烈な後悔が襲って来た。
俺は何をしてるんだ・・・
「え?琥太郎?どうしたの?え?」
あんなにギラギラした目をしていた琥太郎が、いきなり泣きそうな顔をして動きを止めるから、そりゃあ何が起きたのか心配になって当然だ。
「ごめん。」
消え入りそうな声でそっと身を引くと、中途半端に片膝に引っかかっていたパンツと下着をそっと直して晶の体を抱き起す。紐が二の腕に引っかかっていただけのブラジャーは背中のホックを留めるのは無理と判断したらしくそっと脱がせて、その代わりにぐちゃぐちゃになったタオルケットを肩にかけてしっかりと晶の体に巻きつけた。
ぐったりしながらもさすがの異常事態に晶も黙っている訳にもいかず。
巻きつけたタオルケットがはだけないだけの力で遠慮がちに手を掛けて俯く琥太郎の両頬をそっとつつんで顔を上げる。
そして、目を合わせようとしない琥太郎を除き込むように見上げた。
「どうした?」
「ごめん。俺、頭に血が上って。最低だ。」
「反省してんの?」
「ごめん。」
「イキナリ過ぎん?」
「えっ?」
「いや、タイミングよ。」
あっけらかんとそう言った晶に琥太郎がやっと目線を上げた。
「怒ってないの?」
「怒ってない訳ないじゃん!人を米俵みたいに運びやがって!」
「え?そっち?」
「もう2度と小脇に抱えないで!あれはマジでキツい。ゲー出るかと思った。」
「まさか晶が颯太を誘うなんて予想もしてなくて。聞いた瞬間キレた。ごめん。」
琥太郎があんな事をしたのは何故かなんて、わざわざ教えて貰わなくても分かっていた。
自分でも浅はかだったと反省してる。
さすがにここまでの事になるとは思ってなかったけど。
「私もごめん。当て付けみたいに。」
「そんなに行きたかった?」
「まだ諦めてない。」
「あんな事されたのに、まだ!?」
「あんな事したのは自分でしょ!?他人事みたいに言わないでよ!本当に鈴木誘うよ?」
眉間にシワを寄せて、ぎゅっと口をとんがらせる。
大丈夫そう。いつもの琥太郎だ。
「晶って意地悪だよな。」
「琥太郎が連れてってくれないからじゃん!」
晶の言葉にドキッとした。
一緒に行く、じゃなく。
連れて行って、なんだ。
確かに「お願い」と言ってはいた。
晶のお願いなら今まで何度も聞いて来た。
だけど、連れて行ってと言われたのは初めて。
幼馴染のお願いはただのお願いでしかないけど。
彼女のお願いは、所謂甘えてるって事?
そんな小さな事が嬉しくて堪らなくて。
緩む口元が止められない。
ニヤけきった顔を見られたくなくて、晶を抱きしめて頭に顎を載せた。
これで顔を見られる心配はない。
だけどそんな事は彼女にはとっくにお見通しの様で。
「何ニヤニヤしてんだよ!まだ話は終わってないんだけど!」
脇腹をツンツン突いて笑わせようとして来る。
多分、想像以上に自分で自分のした事にショックを受けていたのを見て、これ以上落ち込ませない様にしてくれているんだと思う。
「分かった。分かったから!」
そう言って顎を乗せていた頭を抱き込む。
連れて行ってやるよ、そう言おうとした時だった。
いきなりガツンとした衝撃が走る。
「急に頭突きすんなよ!いってぇ!」
「お前!!!」
顎を摩りながら見下ろすと、蔑むようにこちらを睨み付けている晶がいた。
「え?」
「どういう事!?」
「ん??あっ!いや!ちがっ!これは!無意識で!」
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