大人の夏休み 牧場編

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「信じらんない!本当に信じらんない!」 「ごめんって!マジで無意識だったんだよ!」 「だから!それ言い訳になってないし!知らないうちにちょこっとでも漏れてたらどうすんの!?どうやって責任取るつもり!?」 何で晶がこんなに怒っているかと言えば、何気なく視線を下げた時に目に入った琥太郎の琥太郎が生まれたままの姿だった訳で。 それについて琥太郎は、カッとなって無意識的にしてしまっただけで、故意的にした訳じゃないと主張しているが、そんな言い訳は通用するはずもなく。 いつかの様にパンツ一枚で床に正座させられている。 「勿論喜んで責任は取る!」 そう反論してみたが、それは火に油を注ぐようなものだった。 「何にも分かってない!」 ついにベッドから降りて琥太郎の正面に仁王立ちした晶は未だかつてない程に怒り狂っていた。 「責任取るってどうやって?仕事辞めるの?そしたらそれこそどうやって育てて行く訳?ファンのみんなや、スポンサーや、いろんな人に対する責任は?違約金が発生したら払えるの!?」 実際はアイドルを辞めたとしても、振り付けや演出などの裏方業務として事務所に残る事は可能だと思う。 だけど晶が言いたいのはそんな事じゃないのは明らかだった。 タレントとしてメディアで活躍するに当たっては、それこそ裏方のスタッフやテレビ局関係者、様々なスポンサー、そして何よりファンの支えがあってこそ。 一方的に、子供が出来ました、なんて無責任過ぎる。 だが、いつかは通らなければならない道である事も確か。 今まで何度となく考えて来た事ではあるが、晶を手に入れた今は、真剣に向き合わなければならない問題だ。 「休みが終わったら、ちゃんと話して来る。まずは事務所の方から。」 「えっ?」 「晶の言う通りだと俺も思う。ちゃんと話し合って今後の事を決めないと。」 「まっ、待って!あの、確かにそうだけど!今は危険な日じゃないし!とりあえず、とりあえず今回は大丈夫だと思うから!」 「それこそそこをちゃんとしないで晶と関係を持つ方が無責任だろ?」 「いや、確かにそうだけど、私が言いたいのは二度とするんじゃないって話であって!事務所と話して欲しい訳では・・・」 いつの間にか形勢は逆転して晶の方がすっかり動揺している。 その証拠に今は何故か琥太郎と膝を突き合わせてアタフタ。 「勢いだけでやっていい事じゃないし、俺が全面的に悪い。ごめん。 でも良い機会になった。ありがとう。」 「いや、まだ赤ちゃんが出来た訳じゃないし!結婚するかも決まってないから、そんなに、」 「は?子供はともかく、結婚決まってないってどういう事?」 「いや、だからさ!」 「晶は嫌なの?迷ってるの?」 「だから、そうじゃなくて!」 「俺は今すぐに結婚したいって言ったよね?晶もいいよって言った!」 ああ・・・ ガチ拗ねモード発動。 言葉使いが子供みたいになってるし。 大人はそんな言葉尻一つを取って追及したりしないじゃん。普通は。 ニュアンス的な問題でさぁ。 「するよ!する!みんなが納得して、ちゃんと環境が整ったらするって! だけど、さすがに時期尚早でしょ!?付き合ってまだ3ヶ月も経ってないんだし!」 「27年付き合って来たよ!」 「そう言う付き合いじゃないだろうが!」 「とにかく結婚出来る環境作りは始める。」 こうなったらもうお手上げだ。 琥太郎は一度決めた事は何があっても諦めないし。 世間一般的に考えたら、職業アイドル、デビュー5年目、27歳。どう考えても理解は得られそうもない事くらい分かりそうなものだけど。 それを踏まえてやるって言うなら止める理由もない。 「分かった。琥太郎が腹を括るなら私も腹を括るよ。」 「え?あ、りがとう?」 「違うよ?事務所に一緒に行ってお願いするとかじゃないからね?」 「ああ、そうだよな。一瞬、社長に直談判するのかと・・」 「いや、そんなのは直談判したところで経営判断だし、私が出る幕じゃないよ。 私が言ってるのは、ちゃんとピル飲んで自己防衛するって意味。」 酷い生理痛やPMSの緩和にも効くかもしれないし。 アイドルの出来ちゃった結婚ほどファンを悲しませる行為はないと思うし。 「ちょっと待って、それはやめて。」 物凄く現実的で、多分一番効果がある事だと思ったのに。 何故か琥太郎からは速攻のNG 「前さ、生理痛が酷過ぎるから色々調べた時に書いてあったんだけど。確かに体に合えばいいけど、合わなくて副作用が凄い人いっぱいいたから。」 「まぁ薬って効果ある分必ず副作用ってあるもんだからね。多少は。」 「ダメだって。ダメ。」 「何でよ!」 「副作用が出たらどうすんだよ!」 「そんなの飲んでみなきゃ分からない。」 「お前しんどくても言わないだろ!?それに日中は様子分からないし。」 「ダメだと思ったら止めるって。まずはやってみないと。」 「いいよ!やらなくて!晶の体に負担をかけるやり方はとにかくやらせない。」 「元はといえば琥太郎が!」 「分かってるって!反省してる!もう2度としないって誓うから!だから薬はやめて。お願いします。」 まさかの土下座! ビックリして反論の言葉は出て来なかった。 実際は悪い事ばかりじゃないだろうし、メリットとデメリットを比較して決めれば問題はないと思うんだけど。 琥太郎がこんなじゃすぐに実行するのは難しそうだ。 「じゃあ話題変えよ?明日何時に家出る?」
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