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「ちょっと待って!」
「待てない。」
「手!ダメだって!」
こんな時にも彼女が一番気にしているは赤く腫れた右手の事で。
いかに自分の事を思ってくれているかが分かる。
だが一方で、そんな余裕があるのが面白くない。
「親指は使ってない。」
「そんな事言ったって!」
まだまだ余裕の彼女の目の前を浮き沈みしている柔らかな膨らみに手をかけると、ヒュッと息を飲むのが分かった。
どんどん冷めて行くお湯と、どんどん熱くなる体温。
さらに彼女の体を引き上げて、胸の頂に口付ければ自然と細い腕が絡まって来た。
頭の中にあるのは彼女を啼かせる事だけ。
しかしほんの僅か残った理性が昨日の出来事を思い出させた。
そうなれば心も体も負担を負うのは彼女の方。
外野の事などどうでもいいが、それだけは避けなければならない。
「晶、掴まって。」
湯船から晶を掬い上げると、無造作にバスタオルを掴めるだけ掴んで。
ポタポタと落ちる水滴など無視して真っ直ぐ廊下を突き進んだ。
ああ、きっと後で怒られる。
変なところで几帳面で、不道徳な事を良しとしないのが晶だし。
だけど大人しく胸に頭を預けて抱かれている晶なんて早々拝めるものじゃない。
初めてのデートの余韻が冷めないうちに。
早く。
バスタオルを投げるようにして粗雑にベッドに広げて、そっと体を横たえる。
離れた体を惜しむ様に両手を広げるなんて、これは夢かと疑いたくなる。
「ちょっとだけ待って。」
頬に口付けて耳元で囁けば、うん、と小さな返事が返って来た。
理性が飛ぶ前に彼女を守る0.01mmの愛情を。
何しろこんな晶を目の前にしては、自分をコントロール出来る気がしないから。
再び彼女を抱き締めると、それに答える様に彼女もぎゅっと抱き着いて来るから。
それだけで暴走しそうになる。
何度も口付けて、あらゆる角度から彼女の唇を食み、舌を絡め取る。
浅く早くなって来る呼吸にやがて甘い啼き声が混じりだす。
やっぱり俺は晶の啼き声に弱い。
なるべく近くでその声を聞きたくて、首筋や鎖骨にばかり口付けてしまう。
脇腹や、背中の窪みや、内腿。
彼女のイイところは知ってるから、まだまだ口付けるところは沢山残っていると言うのに。
彼女の表情が見たくて、そっと唇を離して見下ろすと、今まで見た事のない晶がいた。
恥ずかしがって照れた晶の表情がかわいくて、そこから余裕のなくなった色っぽい表情に変わって行く過程を見るのがいつもの楽しみだったけど。
今日は違う。
とろんとした瞳はそれでもしっかり俺を見ていて、明らかに欲情している。
晶から求められる事など想像もしてなくて。
背中にかかっていた手が頬を優しく撫でた時、本能的にヤバイと警鐘が鳴り響いた。
動揺し過ぎて、動けずにただ見つめ合う。
晶は笑って両頬をゆっくり包むと、ポツリと言った。
「すきだよ。」
煽るなんて言葉じゃ足りない。
一瞬で体中の血が沸騰したような感覚に襲われて、次の瞬間には体を繋げていた。
もっともっと晶を啼かせて、ゆっくり楽しもうと思ってたのに。
そんな考えは意図も簡単にぶっ飛んだ。
いつもはシーツや枕を握りしめる小さな手が、背中に爪を立てていることすら快感で。
自分でも少し怖くなる。
「晶、もう一回、さっきの。」
彼女の好きが聞きたくて、舌を噛まないようにペースを落とす。
ゆっくりと彼女の中をなぞると、ハッキリと分かるくらいに反応した。
「それ、ダメ、だからぁ!」
そんな意図は全くなかったけど、明らかに余裕の無くなった彼女。
女の子のカラダはこうやって探ってみないとわからないもんだな、と思わず口元が緩む。
「これがイイの?」
意地悪く問いかければ、照れる余裕も無くなった彼女のカラダがいち早く反応した。
物理的には余裕な筈なのに、そんな彼女の姿に脳が快感を拾ってしまって、自分の方が収まりがつかなくなって来た。
めちゃくちゃにキスしたい。
彼女の声が聞きたい。
覆い被さると同時に落ちて来た今日最大の爆弾。
「だい、すき。こた、ろ。ずっと。」
完全にノックアウトされた。
このタイミングでそれは反則だろう?
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