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「琥太郎・・・」
「聞いた。なんであんなになるまで飲んだか。お前のやりそうな事だって、仕方なかったんだろうなって頭では分かってるけど、無理なんだよ。酔って歩けなかったとしても俺以外のやつがお前に触れるとかマジで無理なんだよ!」
「ごめん。」
「しかもそんなにどエロいコスプレ姿、他の奴に見られたかと思うと気が狂いそうだよ!」
「ごめん。何でこんな服着てるのか覚えてなくて、いつどのタイミングが何があったのか、」
「酔っ払って余興に立候補したって聞いた。詳しくは聞いてねぇよ。そんな余裕なかった。」
「余興に立候補した!?私が!?」
「吉野さんって女の子がそう言ってた。」
「嘘だよね!?嘘って言って!」
「それはこっちのセリフだよ!!!」
「いや、そうだけど!そうだけどさ!え?本当に?私が自ら?え?やだ、マジで?他に何かやらかしてない!?えぇっ!?」
「俺が聞きてぇよ!聞きたくないけど!」
「待って、やだ!本当にやだ!」
「もう行かなくて良くねぇ?仕事辞めてよ。本当に。」
衝撃の事実にただ混乱して、自分の事だけしか考えられずにいたけど。
そう懇願した琥太郎の顔は笑ってなんかいなかった。
「俺ヤダよ。俺以外の奴がお前を見かける度にあのエロい格好思い出すとか考えらんねぇよ。」
「いや、多分みんなもかなり出来上がってたし・・・」
「自分の格好分かってんのかよ!めちゃくちゃ腹立って、めちゃくちゃイライラしてる俺でさえ、すげぇ興奮して一晩中目が離せなかったって言うのに!」
「えぇ・・・」
なんか話変わって来たな。
琥太郎の性癖とか変態具合の話じゃなかった筈。
「何ドン引きしてんだよ!晶が悪いんだろ!?」
「いや、まぁ、そうだけどさぁ。一晩中見てたって・・・」
「俺怒ってんだからな!」
「だからそれは分かるけどさぁ。」
「晶ちゃん?分かってねーな?」
「いや、分かるって。琥太郎ちょっとそう言う変態みたいなとこあるの知ってるし。」
「ちげーよ!酔ってお前が覚えてない時にしたら勿体ないから起きるまで待ってた。お前が自ら起きるのを首長くして待ってた!!!」
「えぇ・・・」
違くないじゃん。
確かに思ってたより変態だったけど。
「琥太郎さぁ、一応アイドルなんだしさぁ。」
「そう言うのいいから。今そんな話してる場合じゃねぇから。」
まだ幾分不貞腐れた顔はしてるけど、その瞳は完全に雄のそれで。
晶も昨夜の失態を考えたら大人しく琥太郎の言う事を聞かねばならない状況なのは分かっていた。
「ごめん。分かった。でもちょっとだけ待ってて。先にお風呂入って来る。昨夜そのまま寝ちゃったし、お酒臭いし。」
ゆっくり浸かってなんて思ってなかった。
ただ、夫婦とはいえ最低限のマナーとしてそう申し出ただけだったのに。
「アホか!行かせる訳ねぇだろ!」
「すぐ出て来るってば。」
「もう、お前何も分かってない。」
「いや、分かってるって。すぐだから!」
「もういい。」
フワリと浮いた体。
抱き上げられる事は日常茶飯事だからそれ自体に驚きはしなかったけれど。
ポスンとベッドに下ろされたきり。
そのまま襲いかかって来ると思った琥太郎は晶をベッドに残して去って行った。
一体琥太郎は何がしたいんだ?
間接照明だけで薄暗い部屋の中、琥太郎が何をしているのか良く見えない。
やっと戻って来た琥太郎の手にはスマホひとつ。
「よし。じゃあ膝曲げて。」
「はい?」
「正座崩してペタンって座って!」
「はぁ?」
「もーっ!だからこうやって、こう!そのまま動くなよ?」
「ちょっと待って!何する気!?」
「何でも言う事聞くって言った!」
「そんな事言ってない!」
「埋め合わせするって言ってた!」
「それは、言ったけど!待って!違う!こう言う事じゃない!」
しっかりスマホを構えてこちらを見ている琥太郎に慌てて反論したけれど。
今日の琥太郎は絶対に引き下がらなかった。
「ねぇ!もういいでしょ!?何枚撮るつもり!?」
「やだ。まだ。」
「落ち着いて考えて!?その写真本当にいる!?」
「いる!絶対いる!」
「何でよー!もーっ!絶対にいらないって!」
「いる!次は椅子に座って脚組んで。」
「やだ!パンツ見えちゃう!」
「見えない様に上手く撮るから!早く!」
「お願いだから正気に戻ってよ!」
「ねぇ!早く!さっさと終わらせたいから!」
「はぁ?じゃあもう終わりにしたらいいでしょ!?」
「一晩中考えてたんだぞ!全部のポーズ撮るまで終わんないから、早く!」
「マジで何なの!?こんなグラビアの真似事みたいな事して!」
「だっていつもなら絶対ダメって言うじゃん。こんなチャンス二度とないじゃん!」
「言うに決まってるでしょ!?大体撮ってどうするの!?そんなにいっぱい!」
「後でニヤニヤしながら見る!当たり前だろ!」
「変態が過ぎる!頭おかしくなったんじゃないの!?」
「男なら誰だってグラビアくらい見るだろ!」
「それなら分かる。グラビアなら!でもこれは違うでしょ。絶対に違う!」
「俺は他の女には興味ないからグラビア雑誌は見ないけど、要はエロい写真だろ?同じじゃん。」
どうにかして琥太郎を止めようとしたけど無駄な足掻きだった。
琥太郎の意思は固く、昨夜の負目があるから晶もそれ以上は強くも言えず。
琥太郎が満足するまでたっぷり写真を撮られ続けた。
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