番外編 くらげ姫の正義感と後悔

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流石にすっぴんのまま真っ昼間の都会に出ていく勇気はなかったから、洗顔と薄化粧だけ。 「やりにくい。」 「化粧しなくていいじゃん。お前眉毛あるし。」 「昼間だから!」 「じゃあせめてリップは塗らないで。」 「グロスだけ。」 「やだよ!ベタベタするじゃん。」 「ベタベタ?そんなにいっぱい塗らないし。」 「いっぱい塗らなくても口の周りベタベタになるじゃん。気にしながらキスすんのヤダ。」 「あのねぇ!」 「だめ!晶が何と言おうと今日はずっとくっついてるし、したい時にキスだってする。」 「家に帰ったらすぐお風呂入るんだからいいでしょ!」 「家に着く前にベタベタだよ。」 着替えだって1人で出来るって言ってるのにあれこれ世話を焼いて、顔を洗うにも化粧するにも背中にべったりくっ付いて離れない。 時折首筋の辺りに鼻先を擦り付けて、お風呂に入ってないからやめてほしいって何度言っても聞く耳を持たない。 ずっとくっ付いてる!って確かに宣言してたけど、琥太郎くっ付き過ぎ! ずっと腰を屈めてる体勢で辛くないのかしら? 「支度出来た?」 「うん。だけどさ、そういえば私の昨日着てた服知らない?」 「チャイナドレスならしまった!」 食い気味にそう言ってニヘラっと笑った琥太郎に嫌な予感しかしないけど、違う、そうじゃない。 「違う。家から着て行ったセットアップ!」 「あぁ、確かに。昨夜受け取った荷物はバックだけだったよ?」 「多分どっかでアレに着替えたんだろうけど。」 「連絡来てないの?」 そう言われてはたと気が付いた。 確かに昨夜から一切スマホに触ってない。 スマホはきちんとバックにしまわれていた。 充電も残っている。 「なんかすっごいメッセージ来てる。何だろ。」 良く考えてからスマホを開けば良かった。 本当に後悔しかない。 普段お互いのスマホの事なんか気にもしてないし、見せろと言われた事もないからすっかり油断してた。 べっとりくっ付いてる琥太郎からは当然スマホは丸見え。 開いたメッセージアプリには職場の様々な人からメッセージが来ていて、まずメッセージを開く前にパッとスマホを取り上げられてしまった。 「何だよこれ!!!」 「ちょっと!返してよ!」 「何でこんなに男からメッセージ来んだよ!つーか男の連絡先がこんなにあるってどう言う事!?」 「男って、職場の人じゃん。こんなにって言っても2〜3人でしょ?」 「4人!」 「とりあえず返してよ。まだメッセージ見てない。」 「俺が操作する!」 「面倒くさっ!とりあえず何でもいいから見せて!私昨日の記憶がないから何かやっちゃってたら困る!」 普通の同僚とか同期とか何もない時にはメッセージのやり取りなんかしないし、皆んながこんなにメッセージを送って来るとしたら何かやらかしたとしか思えない。 だから今は琥太郎に付き合ってる場合なんかじゃないのよ! 後ろから晶を抱き締める手に力がこもる。 琥太郎が1番上のアイコンをタップして、表示されたメッセージに2人して絶句した。 「最悪。」 一件目のメッセージを見た琥太郎が次々にメッセージを開いて行く。 沢山来ていたメッセージはどれも同じ内容で、晶は突き付けられた現実に呆然とするばかり。 琥太郎は途中でメッセージを開くのをやめてスマホを放り投げると強引に晶をベッドに押し倒した。 「ちょっ!」 「ふざけんなよ!何だよあれは!」 「だから!記憶ないんだってば!」 「もーっ!マジで最悪!」 「私だって最悪だよ!」 「消してって言って!全員!」 「写真消したところで何の解決にもならないじゃん。」 皆が一様に送って来ていたのは昨夜の余興で撮られたと思われる写真。 どの写真にもノリノリでポーズを決めている晶が写っていた。 マジで最悪はこっちだよ! 月曜日どんな顔して行けばいいの!? 勿論一緒に写ってる子たちもみんなノリノリだったけど、彼女たちは若いから許されてもアラサーの私はどうなの!? 曲がりなりにも既婚者だよ? あの若い子たちに混じってあんなミニスカ履いてノリノリで写真撮らせて。 痛いオバサンって言われても言い返す言葉がない!!! 「でもさ、ほら、見て?まだチャイナドレスで正解だったよね?」 「正解な訳あるか!ミニスカポリスだろうが、ミニスカナースだろうが同じだよ!」 「ちょっとくらいフォローしてくれても良くない!?」 「お前俺の気持ち全然わかってない!一晩かけて少しだけ落ち着いたのにこんな写真見たら昨夜よりイライラすんだろ!!!」 言葉を返す間もなく首筋にセットしてない琥太郎の柔らかな髪が触れて、ハッとした時にはもう熱い唇が押し付けられていた。 脇腹から背中を撫で上げて指先は躊躇なく締め付けを開放する。 「琥太郎!時間!」 「むり。お前が悪い。俺に嫉妬させたらこうなるって分かってんだろ?」 「でも時間が!」 「関係ねぇよ!」
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