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「ねぇ、お揃いのバスローブ買わない?」
「買わない。」
「何で!?風呂上がりとか便利じゃん!」
「絶対乾きにくいもん。あの厚手のパイル地。」
「そんな理由!?」
「とにかく必要ありません。それよりさ、さっきフロントで貰ってた紙袋、あれ私の服?」
「服は届いてなかった。一応事情は話しておいたからもし見つかったら連絡くれるって。」
「そっか。やっぱり誰か持って帰ってくれたのかも。明日幹事に聞いてみる。」
「その幹事ってまさか男!?お前の服、変な事する為に持ち帰ったんじゃ・・・」
「何でいつもそう言う発想になる訳!?みんながみんなアンタみたいな変態じゃないから!」
「いや、絶対そうだって!」
また変な事を言い出した琥太郎は放っておくに限る。
それにしても本当に記憶がない。
写真で何となくその時の状況は分かったけど、脱いだ服の所在どころかあの写真を撮られた事すら覚えていない。
そうこうしている間にやっとマンションに辿り着いて、着替えの荷物やら紙袋やら荷物の多い琥太郎に気を遣ってひとつ持つと申し出て見たけれど当然断られて、それどころか琥太郎は複数の荷物を片手に纏めて持つとぎゅっと晶の腰に手を回して抱き寄せた。
「ちょっ、歩きにくい!」
「いいの。くっ付くって言っただろ?」
流石にいくら琥太郎とは言えいつもはここまで外でべったりくっついたりしないのに。
「別にもう怒ってないよ?」
「分かってる。今日はくっ付くって決めたからくっ付いてるだけ。」
琥太郎はその言葉の通りに、帰って荷物を置いた瞬間から晶の背中にべったりと張り付く。
手を洗う時でさえ離れようとはしなくて、重い!動き辛い!と言う晶をさっさと抱き上げて定位置のソファーへ。
肘掛けを背もたれに座ると両手両足で晶をしっかり抱き込んだ。
「ちょっと?」
「なに?」
「いや、流石に。」
「流石に何?」
「くっ付くレベル超えてない?」
「別にいいだろ?」
確かに悪いって事はない。
何かする用事がある訳じゃないし、琥太郎は全体重をかけて寄り掛かったって全然平気だろうし。
だけど、くっ付くって言うよりこれは寧ろ拘束では?
別にここまでしなくても良くないか?
「ねぇ、やっぱりどこか出かける?まだ昼過ぎだし、今からなら、」
「行かない。今日はずっとこうしてる。」
「そうか。琥太郎寝てないんだよね。お昼寝する?」
「しない。眠くないから平気。」
「あのさ、今どんな状況?一応聞くけどいつまでこうしてるつもり?」
「ずっとだけど?何かしたい事あんの?」
「え?いや、特にはないけど。」
「じゃあいいだろ?」
いや、だから、別に良いけどさ!
良いんだけど!
どうせ私はボケっとしてるだけなんだけど!
「何か見てもいい?」
「いいよ。はいどうぞ。」
手渡されたリモコンで検索をかけて、海外のドラマとかドキュメンタリーとか有名なアニメとかの中から一応琥太郎にも意見を聞いて、久しぶりに見る有名アニメに決めて見始めたけれど。
首筋にスリスリと擦り寄って来る琥太郎の髪がサワサワと頰の辺りをくすぐるし、まぁまぁな力で拘束されてるからちょっと動くにも大変だし、正直言って全然集中できない。
「琥太郎見てる?」
「時々。」
「他のやつにする?」
「いや、別にいいよ。晶が見たいの見な。」
「正直に申し上げて、非常に見辛いんですけど。」
「体勢つらい?」
「いや、そう言う事ではなくてね。あ、そうだ!くっ付いてたいなら私が膝枕してあげるよ!ね?」
「嬉しいけど今日はいい。」
「なんで!?」
「ぎゅっとしてたいの。」
そう言った琥太郎は少しだけ背中を浮かせて起き上がると晶が振り向いているのを良い事に何度も触れるだけのキスを繰り返した。
「ずっとこうやって俺の腕の中にいろよ。」
「いるじゃん。」
「お前は隙がありすぎなの!俺の大事な奥さんだってもうちょっと自覚して。」
「してるって。こんなに大事にされたら流石に旦那さんの事しか見えてないからへーき。」
「俺しか見てない?」
「そうだって言ってるでしょ!」
「あーっ!もう可愛い!ちゃんとぎゅーしよ?こっち向いて、跨って。」
リクエスト通り正面に向いてぎゅっと琥太郎の首に腕を回せば。
顔は見えないけどムフムフと声を抑え切れない琥太郎の表情は容易に想像できた。
「ねぇちょっと苦しい。」
「ごめん。こんくらい?」
「変わってなくない?もっと緩めてよ。」
「えぇっ!これ以上はヤダよ。隙間出来ちゃうもん。」
「隙間って!」
「ピッタリくっ付いてないとだめ!」
「ダメって!どこ目指してんのよ。」
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