1934人が本棚に入れています
本棚に追加
パパになる気持ちって・・・
本当に?本当に俺がパパになるの?
「俺がパパ・・・」
「おい!パパ!とりあえず先に仕事の話な?色々感傷に浸ってるとこ悪いけど。」
「いや!帰ります!帰ってちゃんと晶に確かめなきゃ!」
「おい、待て!待て!落ち着けって。」
「落ち着ける訳ないでしょ!?」
こんなところでのんびり話してる場合じゃない!
早く帰って晶に確かめないと!
それにしても、安産祈願に行くなら俺だって一緒に行きたかった!
病院だって!
あの、ほら、エコー!そうエコーの写真!
あれ絶対見たい!
次の検診は絶対に!絶対に一緒に行く!
赤ちゃんが動いてるの見えるんだよな?確か。
いや、見たいでしょ!?
そりゃあ見たいに決まってる!!!
「5ヶ月ってもう動きますよね?病院で、動いてるの見れますよね!?」
「だから落ち着けって。先にマスコミ対策。さっきから何回言わせんだ。」
「いや!違う!帰らないと!」
「お前は!座れ!座ってとりあえず俺の話を聞け!」
「でも!」
「晶ちゃんがお前に言わないのには何か訳があるんじゃないの?」
「え?」
「お前の性格考えてタイミング見てるとかさ、舞台前だし。後はやっぱり父親が芸能人だと色々あんだろ?子供も。そう言う不安とかさ。俺も実日子にそれは言われた。」
「あぁ。確かに。」
「まぁ、後はサプライズ的な?」
「サプライズ!?」
「知らないけど!一番ありそうななのは大きい仕事の前だからって線だけどな。稽古は集中してやらないと怪我するし。本番も近いし。」
「そうか。俺の為を思って・・・」
「知らねーけどな!」
サプライズは勿論嬉しいけど!
でも、やっぱり早く確かめなくちゃ。
だって妊娠してるって事はもう1人の体じゃないって事だし、今まで全然気をつけてなかったけど日常生活の中にも危険が溢れかえってる訳だし。
俺だって子供が欲しいって口では言ってたけどその準備なんか何も出来てなくて、予備知識だって全くない。
「とりあえず仕事は辞めさせなきゃ。」
「え?何で?」
「だって危ないでしょ!?通勤とか!何かあったらどうするんですか!」
「でも晶ちゃんは悪阻が酷いとかそう言うのなさそうなんだろ?」
「今から酷くなるかもしれないでしょ!?」
「いや、悪阻って大体3〜4ヶ月がピークだから、ああ、そうか。」
「何!?何ですか!?俺全然分かんないからちゃんと説明して!」
「いや、もしかして早めに行ったのかもな。安産祈願。」
「早めに行ってもいいんですか?5ヶ月じゃなくても?」
「まぁ色々都合もあるだろうし、そう言えば祈祷待ってる人たちのお腹の大きさもバラバラだったから。」
「だから?」
「いや、だからさ、もし妊娠がわかったばかりなら5ヶ月ってちょうど舞台の真っ最中だし、お前が行きたいって騒ぐのを見越してお袋さんと早めに済ませちゃった可能性もあるかなと思って。」
「それだ!」
やっぱりどう考えてもさすがに5ヶ月まで黙ってるなんておかしいし、もし安産祈願に行くとしたら舞台中だとしても絶対俺だって行きたいし!
そう言う諸々を晶に見透かされてるって考えたらしっくり来る。
「悪阻ってどんななんですか?実日子さんはどうでした?確かに最近事務所で見かけてなかったけど。」
「実日子は24時間車酔いって言ってたな。」
「24時間・・・」
「うちはそんなに頻繁に吐くって訳じゃなかったけど医者に言わせると吐ける人と吐けない人がいるだけで気持ち悪さは一緒だって言ってたから。」
「やばい。晶は吐けない部類だ・・」
「まぁ全然悪阻がない人もいるらしいからまだ分からないけどな。」
「予防法とかないんですか!?」
「知らないけど予防法なんかねーだろ。あったらみんなやってるだろうし。空腹にしないのが良いらしいけどうちは空腹以前に水も気持ち悪いって言ってたから。」
「で!?実日子さん今は良くなったんですか?」
「ああ、割とマニュアル通りに。正味一月くらいかな?苦しんでたのは。」
「そっか。そうか。1ヶ月か。ヤバいな。ちょうど舞台だし地方公演に被るとマジでヤバい。どうしよう。」
「お前がいたって良くなる訳じゃないんだからそんな心配したって意味ないだろ。」
「でも1人にしとけないじゃないですか!顔も見れないから心配だし。」
「いない方がいいかもよ?」
「なんで!?」
「俺も正直傷付いたんだけど、悪阻で匂いに敏感な時にさ、臭いから近寄るな!って言われててさ。」
「え?」
「どんなに入念に洗っても、風呂上がりでも臭いって。暫くソファーで寝てたもん。俺。」
「えぇっ!?マジで!?」
「香水の類の匂いもダメだからどうしようもないよな。自分じゃ全然分からないけど男臭い!って散々言われて仕方なく。」
「俺そんな事言われたら泣いちゃう!」
「バカ!俺だって泣きたかったわ!」
一緒にベッドに入るどころか近付けないって!
具合悪そうにしてる晶を遠目で見守るしかない!?
そこにいるのに触れられない、手も差し伸ばせないなんて!
そんなの絶対に無理に決まってる!
「まぁでもさ、ちっちゃいのにちゃんと手足動かして心臓ピコピコさせてんだよ。徐々にお腹も膨らんで来てさ。そう言うの見ちゃうとそりゃあそんな些細な事って思えるんだよ。マジで。」
そう言った澤村くんは本当に幸せそうで。
何だか神々しくさえ見えた。
世界でいちばん大切な人が、2人の血を分けた子供をお腹に宿してる。
愛する人が命を懸けて、大事に大事に我が子を育てている。
そう考えたら。
例え酷い事を言われたって、触れる事が出来なくたって確かにそんな事はどうでもいいに決まってる。
出来る事なら何でもする。
晶と子供のためなら何だって出来る。
実際に子供をお腹の中で育てている母親に比べて、父親に出来る事なんか大してないのかもしれないけど。
でも出来る事なら何だって。
「澤村くん。父親に出来る事は何ですか?俺、これからちゃんと勉強するつもりです。だけど今は何も知らないから。教えてください!俺に出来る事。」
最初のコメントを投稿しよう!