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番外編 くらげ姫の小旅行
「晶ちゃぁぁん!頼むよぉぉ!」
「もう終電終わってるってば。無理なもんは無理!」
「だって今日ついに雪ちゃんまで来たんだよ!?俺だけ会えないなんてズルい!」
「それは仕事ででしょ?チーフさんインフルエンザに罹っちゃったなら仕方ないじゃない。」
「あかりちゃんも志穂ちゃんも来てた!何で晶だけ来ないんだよ!!」
「だから何回も言ってるでしょ!?新システムのテストが休みの日にしか出来ないやつだったんだってば!」
「何で晶が立ち会わなきゃいけないんだよ!」
「そんなの私が聞きたいよ!いつの間にかアサインされちゃってたんだもん!私だって連勤で超疲れたっつーの!」
「今週末まで待てない!今日帰る!」
「アホか!」
「アホだよ!悪いか!もう1週間以上触ってない!限界だよ!」
「大袈裟な。大体ひかりだって行ってないでしょ?土曜日の仕事帰りに一緒にご飯食べたもん。」
東京公演を無事に終えて、慌ただしく大阪へ。
公演のインターバルは1週間。
準備や場当たりもあって琥太郎たちは3日前に現地入りしていたから、東京を離れて今日で丁度1週間が経った訳だけれど。
来期から本番稼働を始める役所の新システムの方も佳境に入って来て、実際に作業をするのは外注業者だけれど立ち会いや確認作業で晶も仕事が忙しく、大阪公演一週目の土日には舞台を観に行く事は叶わなかった。
琥太郎は大阪に発つ前から大騒ぎしてたけど、先週の土日にあかりさんと志穂ちゃんが、そして今日雪ちゃんがやって来た事で昨日今日と時間さえあればメッセージや電話がかかって来る。
「今週末は観に行くからさ。」
「待てない!今日!今日がいい!」
「だから電車ないって。ワガママ言わないの!」
「俺が行く!レンタカー借りる!朝には着く!」
「やめなさい。本当に怒るよ?」
「じゃあ明日帰る!もう我慢できない!」
「終電の新幹線乗って帰って来て始発に乗ってまた戻るなんて体壊すでしょ!?」
「俺もう充電ないもん!0%!」
「子供か!」
「何とでも言え!」
「福岡行く前に帰って来るんでしょ?そしたらいっぱい甘やかしてあげるから。ね?」
「えっ!マジ!?いや、待て!その前に今週末があんだろ!まさか今週も来ない気!?」
「いや、さっきから行くって言ってるじゃんよ。」
「じゃあ何で!?週末は!?」
「さすがに劇場では何も出来ないでしょ。こっそり手振るくらいしか。」
「劇場じゃねぇよ!夜!」
「夜?えぇ!?楽屋ぁ!?」
「ちげーよ!いくら俺だって楽屋で何かしようとは思わねぇわ!三太もいるし。」
「夜って、は?ホテル抜け出す気?やめなよ!また三角さんに怒られるじゃん!」
もうさ、三角さんについては鬼門中の鬼門な訳。
遼馬のデビューコンサートの時から今まで良い思い出なんかひとつもない!
実際に面と向かって会った事はないけれど、三角さんだって私の事良く思ってないのは明らかだし、私だって迷惑かけてる自負はあるからもうこれ以上騒ぎは起こしたくない。絶対。
「一緒のホテル取れば問題ない。現に三太だって紘だってそうしてるし。」
「お前らモラルってもんはないのか!」
「下手に他のホテルに行って騒ぎになるより良いだろ。普通に考えて。」
「三角さんに見つかったらどうするの!?」
「あのなぁ!三角さんは学校の先生でもないし親でもないの!プライベートはプライベート!第一俺たちは結婚してんだから何の問題もないだろ!?」
そりゃあ確かにそうかもしれないけど。
やっぱり何だか気乗りはしない。
いくら結婚してるからって、琥太郎の職業はアイドルな訳だし、ファンの人の気持ちを考えたら。
「今週末の部屋は取ってあるから。」
「え?私別のホテル予約しちゃったよ?」
「キャンセルしといて。」
「えぇ?だってひかりと2人でレディースプラン申し込んじゃったし、」
「いいからキャンセルして。」
「そんな!1人で決められないでしょ!?色々特典もあるし相談して決めたんだから。」
「特典ってなに!?」
「アメニティが有名ブランドでしょ?貸切露天風呂でしょ?焼きたてパンのモーニングビュッフェでしょ?あとは何だったかな。」
「アメニティどこのブランド?揃えとく。あとパンも手配する。露天風呂は今度連れてく!」
「だからそう言う事じゃなくて!ひかりに相談してからじゃないとキャンセル出来ないって話!」
「じゃあ話しといて。いや、颯太に言っとく。そんな話あいつだってビックリだわ。」
もうこうなったらお手上げ。
要求がエスカレートする前に手を打つしかない。
さもなければ本当に弾丸で帰って来かねない。
仕方なく週末のホテルの件を了承して、ひかりにもちゃんと話しておくと約束して漸く長い長い琥太郎との電話が終了した。
とりあえずひかりにはメッセージ送っておかなきゃ。
多分颯太くんから連絡が入るだろうけど、言い出したのは琥太郎だし。
ひかりにしてみれば迷惑な話かもしれないし。
しかし、返って来たメッセージは意外な物だった。
せっかくだしさ、1日有休取って前乗りしない?
土曜日の宿泊予定を1日前にずらして貰う事が可能らしく、お互い休日出勤分の代休を金曜日に取って1日大阪を満喫しよう!というひかりの提案に晶も乗り気で同意した。
新システムの移行はこれから本番に向けてやる事だらけだし、今より更に忙しくなる事は目に見えている。
システム関連の作業は休みの日でシステムを使わない時にしか出来ない事も多いし、先週みたいな休日出勤だってきっとある。
そう考えたら、これは羽を伸ばすチャンスじゃないか、と。
幸い先週のテストは上手く行ったし、今週は急ぎでやらなきゃいけない事もないし。
良く考えてみたら友達と2人で旅行なんて初めての事。
そう考えたらいてもたってもいられないくらいにウキウキして来た。
琥太郎には当日伝えれば良い。
どうせGPSで居場所がバレるし内緒には出来ないんだから正直に話してしまう方が良い。
週末は琥太郎たちのホテルに泊まるんだし、前泊なら別のホテルに泊まっても問題ない。
早く行く分には勿論文句なんかないだろうし。
朝の新幹線に乗って午前中には大阪に着いて、ベタな観光地を2人で楽しむ!
そしてたこ焼きも絶対に食べる!
何ならUSJに行くって言うのもアリかも。
こういうのめっちゃワクワクする!
大阪旅行楽しみでしかない!!!
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