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今にも泣き出しそうな顔で必死に訴えているけれど。
いや、どう考えても病気でしょ。
風邪なのか過労なのか分からないけど。
「晶ちゃん・・・」
「だめ。」
「晶ちゃぁぁん!」
「だめなもんはだめ!そう言う事するのは元気になってから!」
「だから俺元気だって!」
「点滴して薬飲んで5〜6時間くらい経つからそろそろまた熱が上がる頃だよ。早く身支度して薬飲んで寝ないと明日舞台に立てなくなる。いいの?それで?」
「立つよ!立てる!だってもう全然平気だもん!明日の舞台は何の問題もない!」
「本当にそうなら良いけどね。とりあえずお風呂!ほら、早く!」
確かに昼間は頭がクラクラして足元もグニャグニャに感じて久々の体調不良を自分でも自覚してたけど今は全く気にならない。
点滴と薬が効いたって言うのはある。
でもやっぱり一番の薬は晶だって。
みんなも言ってたし俺だってそう思う。
その証拠に晶を抱き締めて仮眠を取ったら嘘みたいに体が軽くなって午後の舞台は本当にいつも通り。
三角さんには苦言を呈されたし俺だって治さなきゃとは思うけど、やっぱりどう考えても体調不良の原因は晶不足に間違いはない。
なのに晶は聞く耳すら持ってくれない!!!
晶の言い付けを守って仕方なく1人で風呂に入って、2人でお弁当を食べて、晶がアイスを食べ終わるまで大人しく待った!
ちゃんと待ったのに!!!
すっごい冷たい目線!
何その呆れた顔!
ちょっと待って?
俺マジで無理なんですけど!?
「早く布団に入りなさい。一応電気点けとこ。暗くなくても眠れるよね?」
「お前も来いよ!何してんの?」
「琥太郎が寝たら。」
「は?」
「一応。一応ね?」
「ぎゅっとしないと眠れない!」
「じゃあ手繋いであげる。」
「晶!」
「大声出さないの!興奮したら眠気覚めるでしょ?」
「ねぇ何でダメなの?さっきちゃんと熱測ったじゃん!平熱だったじゃん!」
「念の為。念の為だって。何回言わせるの。」
「大丈夫なんだって!本当に!」
「分かった。分かったって。だけど今夜はだめ。今日の今日だしせっかく熱が下がったのにまたぶり返しでもしたら大変でしょ?」
「ぶり返さない!絶対!逆に!逆にだよ?こんな状態じゃ余計に眠れる筈なんてないだろ!?」
「あんたプロでしょ?睡眠も体調管理の内だよ。無理矢理にでも寝なさい。」
「無理に決まってんだろ!どんだけ溜まってると思ってんだよ!!」
「知らないよ!やめてよね!下世話な話しないの!!」
「したい!しなきゃ寝れない!」
「琥太郎さぁ・・・まさか・・手軽にセックス出来るから私と結婚したの?」
「は?お前、さすがに怒るぞ?」
「その言葉そっくりそのまま返す。」
「違うだろ!?ずっと会えなかったんだぞ?好きな女にやっと会えたら抱きたいに決まってんだろ!?」
「だがしかしそれは出来ません。何故ならあなたは今日熱を出して倒れたばかりだから!」
「だからそれは!」
「琥太郎。」
「だから!俺は!」
「琥太郎。」
「晶!話聞いて、」
「琥太郎。」
あぁ、もうダメだ。
晶の「琥太郎」攻撃。
これが出たらもう無理だ。
きっと何を言っても「琥太郎」って嗜めるみたいに名前を呼ばれて会話にもならない。
ズルい。
マジでこの戦法ズルい!!!
「泣くぞ!?」
「琥太郎。」
「あーっ!もう!分かったよ!今日はしない!約束する!だからぎゅっとさせて!もう限界だよ!」
「約束ね?ぎゅっとするだけだからね?」
「分かってる!いや、チューはする。それくらい良いだろ!?」
「えぇーっ?それは、ちょっと・・」
「じゃあ唇にはしない!ならいいだろ!?」
「うーん。まぁ、それなら?いや、マジで軽いやつだけね?分かった?」
「分かったってば!早く来て!早く!」
半信半疑みたいな思い切り疑わしい目を向けられてるけどそんな事知るもんか。
勿論本音はめちゃくちゃシたいけど、それよりも晶に触れたい気持ちの方が強い。
ずっと警戒してまともに触れさせてもくれないこの状態の方が遥かに辛い。
「ねぇ、この匂いなに?知らない匂いなんだけど?」
「え?ああ!ほら、例のレディースプランのやつ。お持ち帰り自由だから貰って来たの。」
「何か、すごい女っぽい匂い。」
「女っぽいって。嫌だった?嫌い?この匂い。」
「嫌いじゃないけどいつものやつの方が好き。」
「良い匂いだと思うけどなぁ。」
「良い匂いだけどね。フェロモン系?」
「フェロモン系?あぁ、イランイランとか入ってそうだね。確かに。」
「ちょっとムラッと来る匂い。」
「ダメだからね?シャンプーのせいにしたって。」
「しねーよ!何の匂いもしなくたってすげームラムラしっぱなしだっつーの!」
「余計な事考えない。頭を空っぽにして寝るの!」
「でも正解だな。いつものシャンプーの匂いだったら止められなかったかも。」
「なんでよ。」
「晶の匂いだから。」
「よく分かんないけど、とりあえず。」
「何?」
「今日はマジでダメだって言ってるよね?」
「だから何もしてないだろ!おっぱい触りたいけど我慢してるし頸だって噛みつきたいけどキスしかしてない!」
「じゃあその臨戦体制やめれる?」
「臨戦体制?」
「主張がすごい。」
「あぁ、これ?」
「ちょっと!グリグリ押し付けないでよ!」
「あぁぁちょっとしただけでヤバい。我慢出来なくなりそう。」
「おい!約束!」
「分かってるって。今日はしない。だけどお前がそんな事言うから!」
「腰引いたらよくない?」
「やだ。くっ付きたい。」
「でもさぁ。」
「気にしなくていいよ。」
「いや気になるでしょ!?」
「だって無理だよ。生理現象だもん。俺の意思じゃねぇよ。」
「どうにかしてよ。」
「だから無理だって。お前の匂いがするだけで反応するもん。くっ付いてたら尚更だろ。」
「だって辛くないの?」
「辛い。」
「じゃあ、」
「していい?」
「違うに決まってんでしょ!?ちょっと離れたらって言ってんの!」
「離れるの無理。いいよ、気にしないで寝ろよ。その代わり明日は絶対にやる。晶が何を言おうと絶対にやる。」
「熱がぶり返さない事が条件だからね?分かってる?」
「分かってる!明日、平熱、それならいいでしょ?」
「うん。まぁ。」
「明日ね。明日。」
「あっ!言い忘れてた!」
「何?」
「明日って言っても12時過ぎたらって事じゃないからね!?当たり前だけど!」
「えっ!?ちょっと待って!12時過ぎたら明日!絶対に明日!」
「あー危ない!子供の言葉遊びじゃないんだから。」
「12時過ぎたら明日!ズルい!約束は!?」
「夜中は明日であって明日じゃない。ここで定義する明日は朝が来てからが明日です!」
「ズルい!それはズルいよ!後出しジャンケンと一緒だよ!」
「あのねぇ!大人の常識として考えなさいよ?何で今夜はダメなのか考えたら分かるでしょ?明日って言ってるけどちゃんと治るまでマジでダメだからね!」
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