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焦るクラゲ王子
「はぁー!きれい!本当にきれい!」
ここは都内の某ウエディングサロン。
首元から指先までを覆う繊細なレースと足首を隠すロング丈の真っ白なシルクのマーメイドラインドレスを着た花嫁に、感嘆のため息が漏れる。
身長168cm細身で美しいボディライン。
長いまつ毛と綺麗な二重。
ウエディング雑誌から抜け出した様な花嫁に見惚れていた晶は、はっとして慌ててスマホのカメラを向けた。
「みーちゃん、凄くキレイ。この世のモノとは思えない美しさ。」
「ちょっと晶、さすがに恥ずかしいから。」
はにかむ花嫁は東馬雅(トウマミヤビ)33歳
そして花嫁をうっとり見つめるカメラマン、そう私、藤井晶(フジイアキ)27歳。
「絶対これがいい!これが一番似合ってる!」
「ホント?じゃあこれに決めちゃおうかしら?」
試着を終えて着替え中の雅を待つ間、晶はため息と共に決意した。
やっぱり婚活始めないと!
こんなモデルばりの雅が33歳で結婚するのだから、人並みの私なんてボケっとしてたらあっという間に売れ残るに決まってる。
日本の初婚の平均29.4歳はもう目の前。
何とか30歳までに結婚して35歳までに出産したい。
出来れば太郎と花子1人ずつ。
人生にドラマなど必要なし。
イレギュラーに対応するのは超苦手。
ハラハラもドキドキもいらないし、漫画みたいな恋にも憧れてない!
知らない事にチャレンジするのも怖い。
とにかく、
よくある恋愛をして。
よくある結婚をして。
慎ましい生活が送れれば良い。
お金持ちじゃなくていい。
飛び抜けた才能もいらない。
大きな病気をしないで88歳くらいまで生きれたら。
そのためにはやっぱり婚活が必須だ。
何しろ、学生時代に何となく付き合っていた人と就職した年のGW明けに別れて、気がつけば今の今まで彼氏なし!
確かにマメな方じゃない。
そして極度の心配性。
しかしズボラ。
もはやユニフォーム化して来た黒スキニーに無難なトップスで毎日通勤し。
職場の飲み会には最低限しか出席しなかった。
最も堅実と判断したお役所に勤めたのは、職場で将来の相手を見つける算段もあったから。
お役所勤めなら賃金、賞与、終身雇用が約束されている。
やはり役所勤めでも最低限の努力は必要だったと悟ったのは最近。
とにかく老後を1人で生きていくなんて私には無理だから!
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