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村の外れに住む女の人が、自分の畑を耕していました。
女の人は、自分の畑の日当たりが悪く、良い野菜が育たないと、腹を立てていました。
畑は森の中ほどにあって、木々の落とす影に包まれていました。
クワをふるいながら(こんな畑を耕しても、たいしたものは、とれないわ!)女の人は心の中で、一人ごちました。
どんなに、耕してもやせた野菜ばかりが取れるものですから、女の人はある日、クワを投げてしまいました。
(わたしばかりが、なぜこんな目に!)
女の人が畑に、立ち尽くしていますと、森の奥から3本足のカラスが一羽飛んできました。
「この森をずっと奥へ歩きなさい」
カラスはそう言うと、また森の奥へ飛んでいきました。
女の人は(足が3つもあるなんて変わってたわね。まぁ、カラスの言うことなんて、ろくなことにならないわよ)そう思いました。
しかし、ちょうど畑仕事に嫌気が差していましたから、(ちょっとくらいなら行ってみてもいいわね)と、軽い気持ちで、森の奥へ歩いていきました。
しばらく歩きますと、一軒の小さな家が見えてきました。家の前には、小さな畑がありました。
(こんなところに、家があったなんて。知らなかったわ)
女の人は、家のそばに行ってみました。
すると、畑に、真っ赤な丸々としたトマト、つやつやと光るピーマン、がっしりと重たげなキュウリ、ピンと尖ったチシャが、わらわらと育っていました。
女の人の畑よりも暗く、日の差さない畑で、これだけの野菜が見事に育っていましたので、女の人は大変驚きました。
それと同時に、心の中にめらめらと緑色の炎が燃え上がりました。
一体、この畑の持ち主は、どんなことをしているのだろう。
女の人がそう思っていますと、小さな家の扉が開いて、中から黒服に身を包んだ老婆が出てきました。
「お前さんも、野菜を作るのかね?」
老婆が声をかけてきました。
「ええ、作っているわ。日の差さない暗い畑でね」
女の人は、つんと答えました。
「この野菜は、私が丹念に育てた野菜だよ」
老婆がそう言うと、畑になっているトマトを一つもいで、女の人にわたしました。
「食べてみるといい」
老婆からトマトを受け取って、食べてみますと、それはそれは大変あまく、みずみずしい水分に満ちていて、女の人の疲れきった体を潤していくのでした。
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