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あつしは、鏡の前に立ち、ゆっくり包帯を取る。
すると、あつしの顔はまた別人になっていた。
しかし、意思の強そうなきりっとした目だけはそのままだった。
こんな顔で会っても、家族は分からないだろう。
あつしは、家族に会えるかもしれないという少しの望みも捨てざるをえなかった。
トントン
ドアを叩いて、樹海の男は自分がそこにいることを主張した。
「よう。いい顔になったじゃねえか」
「なんで二度も整形する必要があったんですか?」
「……そりゃ、同じ奴が2人いることになるからだろうが。少ない脳みそ働かせて考えれば分かることだろうが」
あつしは、もう一度鏡で新しい顔を見る。
「それは……もう、この顔の人はいないから、この顔に整形したってことですか?」
樹海の男は、ニッと気味の悪い顔で笑った。前歯が一本無くなっていた。
「すくねぇ脳みそ使えたじゃねぇか」
「前歯、折れちゃったんですか」
「ん?ああ、まあな。でも俺はこのまま直さず行くぜ。お前みないに直さねぇよ。おい、行くぞ」
あつしは車に乗せられた。
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