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「3000万貰える。条件は、今のお前を捨てて、整形して、新たな自分で生きる。それだけだ」
「え、3000万?」
「そうだよ。こんないい話ねぇよ。しかもお前は死のうとしてた。新たな人生を歩めるなんて願ってもないことじゃねぇか?」
「……」
「考えな」
あつしは、頭を抱えて考え込んだ。
男は、たばこを取り出し火を付けた。
「ただ」ほど怖いものはないよ、とよく母に言われたことを思いだした。
きっとこの話を聞いてもそう言うだろうな。
でも、この男の言う通り、死のうとしたこの人生。何を躊躇することがあるだろうか。目の前には、お金と新しい人生があるのに。
それに死なないで、頭を抱え切り株に座っていたのは、本当は死にたくないからじゃないのだろうか。
「あの…その新たな名前ってどういうことですか?」
「現時点で存在しているある男がいなくなった時に、お前に代わってもらう。
それまでは、その名前とはまた違う名前で、生活してもらう。自由にな。でも、それは仮の名前だ」
「なんだか良く分からないけど」
「ま、本来死ぬ人生だったなら、何でもよくねえか?新しい自分になれるんだよ」
「確かにそうだ」
あつしは、頷いた。
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