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その後
あつしは、建設会社の社長の娘と恋に落ちた。
まじめで一生懸命仕事に励むあつしを建設会社の社長はとても気に入っており、トントン拍子に結婚した。
そして可愛い娘にも恵まれた。
あの繁華街の外れの病院で整形をしてから、10年経っていた。
人間の脳というものはすごくて、悪い記憶は忘れるようになっている。
あつしも、あの10年前の話は記憶の隅に追いやられていた。
あれから連絡もないし、もう俺は必要ないのだろう。
そう思い込む。
それに、10年前は東京に住んでいたが、その後、埼玉、神奈川と引っ越し、
今は群馬に大きな一軒家を立てて住んでいる。
そんなところまで、探しに来れるはずなんてないんだ。
万が一、無いと思うが、万が一。
もし男が訪ねてきたら、妻に土下座してお願いして3千万は返そう、とあつしは思っていた。
ある晴れた朝、
自宅から車で会社に出勤して、ビルに入る直前に誰かに声を掛けられた。
「おいっす。久しぶり」
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