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彼女――遥香とは、大学一年の時に出会った。惰性で入ったテニスサークルの歓迎会で、近くにいた一年生同士でLINEを交換した。遥香はその中の一人だった。LINEのBGMが俺の好きなバンドの最新曲で、それが話の発端になった。何回か飯に行って、隣県で行われたフェスの帰りに俺から告白した。
その後二人でほとんど行っていなかったサークルを辞めて、三年生の春から俺が彼女の家に住み着くようになった。一人暮らし用の部屋で一人きりの空間はほぼなかったけれど、不思議と苦ではなかった。就職先も既に決まり、お互いの親に挨拶なんかしたりして、このまま俺は遥香と結婚するんだと、そう思っていた。
「遥香は、俺と結婚したくない?」
「え? いやー、涼くんと結婚はちょっと、今は難しいかなぁ……?」
悪気ない言葉に心がベコベコに凹んだ。遥香のちょっと戸惑った苦笑いが俺の心に突き刺さってズキズキ痛い。それに気づいた彼女が慌てて「あっでもほんとに! 涼くんのこと嫌いになったとか、浮気しているとかじゃないから!! ほら私も、もうすぐ死んじゃうし!!」と全力の謝罪を入れてくる。が時すでに遅し、何ともいえない虚無感に俺は襲われる。
遥香のウエディングドレス姿、見たいんだけどなぁ。ぼそっと小さく呟いたけど、遥香の耳には届かなかった。
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