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「エリザも見てるでしょ、先生のあの綺麗な翼!早くあれが自分のものにならないかなって夢見るのは当然じゃない?まあ、翼が生えても、この庭園じゃ絶対に飛んじゃいけないって言われてるけど」
この“ミストレート園”にいるのは、全員が天使の見習いたちだった。見習いなので、まだ背中に翼がなく、見た目は人間とさほど変わらないのだが。自分達はみんな神様から特別に作られた存在で(だから、人間と違い両親などいない)、このミストレート園で生活し、やがて天使として立派にお仕事をするのだという教育を受けている。ここで数年間過ごした後、天使としての資格を得るために修行に旅立ち、やがて神様のところで世界を動かす仕事をするのだそうだ。
いつ修行に出るのかは、はっきりとは決まっていない。
ただ、十歳になる前に修行に出る子も多い中、アレクシアが焦りを感じるのは至極当然のことであるのだった。自分は未熟だから、なかなか修行に出して貰えないのではないか。天使の羽が生えてくるようなら、急いで修行に出してくれと先生にお願いしに行くこともできるのに、と。
十歳を過ぎても園に残っている子供はいるし、中には十八歳くらいでやっと修行の機会が巡ってきた子もいるとは知っている。十歳程度で焦るにはまだ早いですよ、と先生はきっと言うだろうとわかっていた。それでも、気持ちはまた別の問題なのだ。
自分達のクラスのポーラ先生は、既に修行を終えた立派な天使の一人である。
園の中の決まりで、此処では翼を広げて空を飛んではいけないらしいのだが、それでも彼女の背中の翼が美しくキラキラと輝いているのは何度も目にしているのだった。園の外では、その翼で自由に空を飛びまわっているとも聞いている。憧れるのはもっともなことだろう。修行前までは翼がない天使達も、修行を終える頃には彼女のように大きく立派な白い翼を携えているのだという。残念ながら修行に出た後園に戻ってくるのは、“天使見習いの指導者”という仕事を与えられ、天使の先生になることが決まった者達だけなのだけれど。
「まあ、綺麗な翼なのは確かよね」
エリザは頷いた。
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