707人が本棚に入れています
本棚に追加
「駈……っ!」
ばしゃんと激しい水音を立て、英が両手でがばりと駈に抱き着く。
「わっ、ばか……!」
体勢を崩し悲鳴を上げる駈を、英は後ろからさらに強く抱き締めた。
「だってさぁ……そんなこと言われて、我慢できるわけないでしょ!?」
「いや、別に俺はそういう……、ッ……!」
……しかも、後ろのモノがすでに芯を持っているのを感じてしまい、駈はカッと顔に血を上らせた。
「ね、かける……」
蕩けるような声色で強請ってくる英。
彼はいっそう腰を押し付けるように駈へと擦り寄ると、その性欲の「せ」の字も感じさせない綺麗な瞳をぎらぎらとさせている。
駈はそうしてぐいぐいと顔を寄せてくる英を何とか手のひらで押し返すと、「まだ話は終わってないからな!」と声を張り上げた。
「なに、駈……?」
そう言いながら太腿をまさぐってくる手を、駈は遠慮なくぎゅっとつねる。
「なに、じゃないっての! だから……これでその『04**』の話、終わりでいいのかってことだよ」
「……どういうこと?」
「いや、お前が聞くのかよ……」
心底呆れたようにため息を吐くと、駈は英の目をじっと見つめた。
「そのタイトル……一体何の数字だよ」
駈の言葉に、英は「あっ……!」と目を丸くする。
だがすぐその後、彼はなぜか口を噤んでしまった。
「……英?」
圧し掛かったまま黙っている英へ、駈がそろりと声を掛ける。
すると英は微妙な表情でぼそりと呟いた。
「この数字はさ……ある日付なんだ」
「日付……?」
駈はざっと過去を振り返ってみたが……二人の誕生日でもないし、当然、時期的に彼にあの曲を聞かせた日でもない。
「何の日付だよ」
「何の、って、ええと……」
ここに来て突然勢いを失くした英に駈は首を傾げる。
「どうした?」
「いや、なんか……言ったら引かれそうな気がしてきて」
「日付で引くとかないだろ」
いいからさっさと教えろよと急かされ、英は「……絶対引くなよ」と念を押す。
分かったって、と雑に頷く駈を横目で眺めながら、英はようやく口を開いた。
「この日付はさ、今から一年前……俺が駈に電話した日なんだ」
「えっ、もしかして、あの……俺が具合悪くして、バーに来てくれた日か……?」
「……」
英がゆっくりと頷く。
「……へ、へぇ、よく覚えてたな……」
「うわ、やっぱり引いてるじゃん……」
英はハァ、とため息を吐いて天井を仰いだ。
最初のコメントを投稿しよう!