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じゃれつくように始まった二回目で、はじめこそ英は駈をいいようにして彼を散々に鳴かせたが……その「身体に聞く」を達成して満足したのだろう、後半はうってかわってゆったりとしたものになった。
……といっても、死ぬほど溶かしつくされた後ではどちらも大して違いなんてなく、繰り返される苦しいほどの快感に、駈はすっかりへとへとになってしまったのだった。
「駈、眠いでしょ?」
「や、ぜんぜん……」
余韻の引き始めた身体が徐々に重く、覚束なくなっていく。
英は自分に跨ったままふらつく彼の背をぽんぽんと叩いた。
「寝ていいよ?」
「だから、眠くないっつってるだろ……」
「無理するなって」
くつくつと笑いながら、英は駈の乱れた髪を整えてやった。
「……」
駈は襲ってくる睡魔に抗いたくて、ほとんど閉じかかった瞼を無理やり持ち上げる。
すると……その視線の先、英もまた蜂蜜色の瞳を優しく細めて駈を見つめていた。
「駈」
「ん……?」
「愛してるよ」
蕩けそうに甘いのに、侵しがたい響きを持ったそれが駈の鼓膜と心を震わせる。
「うん……俺も」
駈はそこで口を閉ざそうとして……その痺れるまで食まれた唇を、もう一度開く。
そして、英をまっすぐに見つめ返すと。
「俺も……愛してる」
そう囁いて、目の前の彼と同じ微笑みを浮かべた。
「駈、」
込み上げる想いに突き動かされ、英の手が駈の後頭部へと回される。
……が、彼のその手が駈を引き寄せるよりも、駈がその唇を押し付けるほうが早かった。
「ん、すぐる……っ、ふぅっ……ン……ッ」
少し掠れの混じった声が、一段と熱を孕んだ水音の合間に零れて落ちる。
さっきまではあんなに「絶対もう無理」と思っていたくせに、堪え性のない身体はそのキスを引き金に、溢れるほど注がれた快感をたやすく思い出してしまっていた。
ただ、そんな爛れた下半身とは違い頭の方は多少まともで、だからこそこんな自分が途方もなく恥ずかしくもあるのだが……しかし何故か今、その脳裏に蘇っていたのは――ずっと昔に目にしたきりの、とある言葉だった。
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