チュートリアル初級

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その後もレイの協力で、「本当にチュートリアルなのか」という程容赦のない敵の応酬を潜り抜けてボスの近くまでたどり着いていた。 「はぁ、は……」 「大丈夫ですか?」 敵から見つかりづらい場所で息切れするちはるの為に休憩を取っていた。 動かしているのは自分の分身であるはずなのに、呼吸が乱れ、疲労が蓄積するたび身体が重くなっていた。 鏡の所で表示されていた注意文は本当に運営の優しさだったんだと思う。 「本当に、疲れますねこれ……」 「はい。チュートリアルで人を振り落してるっぽい所もあって」 「え?」 「楽しく遊んでもらうのが目的なので、この時点でついて来れない人は多分この先も楽しめない、という配慮というか」 「なる、ほど……?」 「……だからこのアバターでクエストじゃなくてショッピングとか楽しみたいだけの課金勢はチュートリアルスキップチケットがあるんですけど」 「えっ!?」 「あれ、今はもうないですかね?」 レイに言われるがままに紙を確認すると、チュートリアルクエストの横にゲーム内通貨の課金した場合のみ購入可の文章があった。 「ほ、ほんとだー!なんだこれ!?」 「……見た感じちはるさんはそっちだけ、というよりゲーム性も楽しみたいのかと思っていたんですが気付いてなかったんですね」 「は、はい」 「悪い事しましたか」 眉尻を下げながら笑うレイに、急いで顔の前で両手を左右に振ってちはるは否定する。 「い、いえ、全然!!ショッピングとかも楽しみですけど、クエスト楽しみたかったですし!レイさんのおかげでここまでこれましたし!」 「頑張ったのはちはるさんですよ」 「チュートリアルクエストは経験値とアイテムドロップは渋い」と言われていたが、レイの言葉通り、ちはるは沢山の敵を倒しており、獲得した経験値も高く拾ったアイテムも多かった。 ちはるがさばききれなかった攻撃はレイが受け流し戦闘を続行し、ちはるがトドメをさす。 また、時々現れる強敵はレイが退け、落ちたアイテムは全てゆずってくれたからだった。 息が整い初めてふぅーと深く吐き出すと、レイが真剣な表情でちはるを見た。 「……普通に攻略するよりちょっと時間がかかってます、制限時間がくるとポートに強制送還されて最初からになってしまうので、急げますか」 「もちろんです!」 二人が隠れていた場所から飛びだせば、丁度ボスが上空を旋回して近くに来た時だった。 「チッ!ここまで来るのは期間中一回のはずなのに」 「えっ?」 レイが舌打ちしてボス――茶色い人より少し大きいドラゴンを睨みつければ、相手も気づいたのか垂直に落下してくる。 「ひとまずここから離れましょう!」 「はい!」 レイが言葉と同時に飛び上がり、ちはるが後に続こうとする。 が、足が引っかかってしまい飛ぶことができなかった。 「う、嘘……!?」 「ちはるさん!?」 「あ、足が、抜けな……!レイさんは逃げて下さい!」 何とか抜けようとするも普段より小さな足が岩と岩の間にすっぽりとハマってしまったのか動けず、ドラゴンが迫りくる。 ―― 無理だ、間に合わない。 ちはるはその場で瞳を閉じた。
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