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「ちはるさん!!!」
レイの叫びと同時に、ドンッ、という大きな音が鳴り響き、辺り一帯に土煙が舞う。
ちはるがゆっくりと瞳を開けると目の前にはポートが……広がっておらず、目の前に墜落して、気絶中のドラゴンが居た。
「あ、あれ……?」
辺りをきょろきょろと見渡せば、真後ろに、大きなハンマーを担いだレイが居た。
彼がドラゴンを叩き落としたようだった。
「今のうちに、岩を壊します。動かないで」
「は、はい!」
レイはちはるに真剣な表情でそう言うと、ハンマーをもう一度振り下ろして、足の引っかかっている大きな岩の片方を叩き粉砕する。
障害物がなくなった事で、ちはるは動く事が出来るようになった。
痛覚は切ってあるものの、ダメージの影響が出ている可能性があるので足を回したり動かしてみる。
「動けそうですか?」
「はい……ありがとう、ございます」
「お礼はまだ早いですよ」
「え? ぅわ……!」
レイはちはるを抱き上げて、ドラゴンから遠のく様に走り出す。
ちはるには、レイの背中越しに、先程まで居た場所にドラゴンの口から吐き出された炎が巻き上がるのが見えた。
「やっば……」
「結構頑丈なんです、あの敵。初心者じゃない俺の武器でも一撃では落ちてくれないので」
「……つ、強すぎませんか」
「でも多分、後少しですよ」
「何でわかるんですか?」
ちはるをゆっくりと地面に降ろしながら、レイはハンマーから身の丈より大きく幅の太い大剣へと切り替えた。
ドラゴンはと言えば上空に旋回し始めていた。
「直接口から炎を吐く攻撃は体力が無くなって来てから、と相手のモーション自体は決まってるんです。だから、頑張ってください」
「お、わ、私ですか!」
「倒せば結構、強くなれますよ」
「……強く」
ここまでの道中で、ちはるが強くなる事をそれなりに重要視している事に気付いていたレイは、にこ、と穏やかに微笑んで煽った。
「それに、ここが必殺技の使い所です」
「ああ!!」
レイに「使う所はあるので温存してください」と、開始直後に言われてMAXまで溜まり点滅する必殺技ゲージが、ちはるの画面には表示されていた。
そして、二人に向かってドラゴンが再び垂直に落ちてくる。
「ちはるさん、落ちてきた後が狙い目です」
「分かりました!」
ドンッ、という音と共にドラゴンが地面に全体重を叩きつける。
今度は足をひっかける事も無く、回避したちはるは宙に飛びあがっていた。
そして、地面に墜落したドラゴン目がけ武器の持ち手についている発動ボタンを押してちはるが全力で剣を振り下ろす。
「これでも、食らえーーーー!!」
初めての必殺技と、ボス討伐の両方をクリアしたのだった。
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