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チュートリアル初級
「え、っとじゃあ次はどうするんだっけ」
「まずはクエストの受注を。俺はここで待ってるので」
タヌの方を指さしてレイが微笑む。
行ってきます、と言ってカウンターへと向かう。
「ご用件はなんですか?」
と聞いて来るタヌに、「クエストを受けたい」と言うと、名前を設定した時と同じように紙が出現する。
「現在受注可能なクエストはこちらになっています」
というと、≪難易度★「チュートリアルクエスト」≫ のみが表示されており、それを選択する。
間違いないですか、と確認されるのではいと答えると、それではお気をつけて、と一礼してタヌとの会話が終了する。
「クエストを受注しよう」をクリアした画面が出たが、カウンターは他の人が待っている可能性もあるのでレイの方へと歩いていく。
自分で選んだ靴なのだが、履きなれないせいか足元が少しおぼつかずちはるはしっかりと踏みしめて進む。
「クエスト受けました!」
「じゃあ、俺をクエストに招待して貰えますか」
「は、はい」
レイが目の前で説明する通りに操作して、緊張しながらちはるは「クエストに招待」のボタンを押した。
ちはるがメニュー画面を開いたままぼんやりとしている間に、慣れているレイはサッと画面を開いて招待を受けたことで、ちはるの方にポップアップの通知が入る。
≪招待した「レイ」がクエストに参加しました≫
「わ、は、はやい」
「慣れだと思いますよ」
既にメニュー画面を閉じたレイが、半透明の画面越しに微笑んでいた。
あれぐらいになりたいな、と思いながらメニューを閉じるを選んだ瞬間、ちはるは視界の端にある物が見えた。
「に、にひゃく?」
プレイは初心者のちはるでも、このゲームについて知っている事はいくつかあった。
クラスと言われる戦闘タイプごとにレベルが存在している事。
そしてその上限が今。
「各クラス200レベル」である事。
閉じる直前の画面には、目の前に居るレイの今選んでいるクラスが「200」である事が示されていた。
ただプレイしているだけで到達できるレベルではなく、指定のクエストと条件をクリアし、上限解放した者だけが到達する資格を得るものだ。
思わずまじまじとレイの顔を見ると、ちはるを見て首をかしげる。
「あ、あの、レイさんって今レベル、200なんです、か」
「ええ。今のクラスのレベルですが」
「……ほ、ほかは?」
「全て200ですが」
なんでも無い事のように言うレイは、転生モノのチート系主人公に見えた。
いや、既に発売されてそれなりの時が経っているこのゲームの場合、チートでもなんでもなく到達する事は可能だ。
全てのクラス、となるとそれぞれで発生する指定のクエストと条件をクリアする必要があり、より時間がかかる。
慣れたプレイヤーなんだな、と思っていたちはるは、目の前のレイが思っていた以上にやりこんでいた事実に目を輝かせて見つめ、ポツリと呟いた。
「……大ベテランだ」
「え、いや、そんな大層な者では……」
「よろしくお願いします、師匠(せんせい)」
「せ、師匠!?」
「一回呼んでみたかったんですけど」
「……レイでお願いします」
「はい」
ベテランと新人のプレイヤー達は、クエストを開始する為にポートへ移動し始めた。
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