3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おぉ……!」
目の前に広がっていたのは高く青い空。
遠くに滝が流れているのが見える崖と、少し坂を下ったところに森が見える、見晴らしのいい場所だった。
整えられた芝生が足元にあり、土で出来た道が森へと続いていた。
「チュートリアルステージは森です。砂利、川、岩場、段差、崩れた建物の残骸、土など狭い範囲の中で様々な足場を踏む事が出来ます」
「へぇ……!」
「早速来ましたよ!」
「えっ、うわっ!!」
道に現れたリスのような可愛らしい見た目の敵が、一瞬で顔を変形させ大きく口を開き鋭い牙を見せて複数飛びかかってくるのを、レイが抱き寄せた事でちはるは間一髪免れる。
「か、可愛くなかった……ありがとうございます、師匠」
「レイです。そういう敵なんです。弱点はしっぽ」
「はい!」
元気よく返事をして片手を前にかざせば、先ほど装備した剣が現れる。
仮想空間だからこそ体験できるゲームらしい動きに、ちはるの表情が緩む。
「楽しいのは分かりますが、そいつは倒すまでまとわりついてきて、隙があれば何度でも襲ってきますよ」
「げっ。が、頑張ります!」
森に向かう道を駆けだし、まとわりつくモンスターの尾を狙って切りつければ、動かなくなる。
「終わった?」
「はい、お疲れ様でした。消えてしまう前にアイテムを拾って下さい」
「わ、わ、はい!」
モンスターを倒したところにアイテムが浮かび上がるアイテムを、ちはるは急いで回収する。
目の前の事に必死になっているせいか、ちはるも不思議と上手く走る事が出来た。
気が付くとちはるの横までレイが歩いて来ていた。
「あの、このチュートリアルってもしかして」
「1匹ずつよりこういうのが多いです、意外と難しいんですよね」
「……?」
喋りながらレイは手にオープニングムービーの騎士が持っていたような武器を持つ。
不思議に思って眺めていると。
「グアァア!」
「わぁあぁああ!」
真後ろから出てきた大きなモグラようなモンスターとちはるの目があい悲鳴をあげる。
その瞬間、レイは抜刀と同時に真っ二つにした。
ドサッ、という音が聞こえてアイテムがレイの後ろに浮かび上がるとちはるにアイテムを取れ、と手のひらで示した。
「……ここで、一度ポートに戻ってしまうのが定番です。どうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
体力ゲージがゼロになると、ポートまで強制送還され、再度挑戦になる。
このゲームは性質上、プレイヤーの疲労度が高いものに該当する為、チュートリアルは明日まで再戦する事は出来ない。
一日に何ステージもクリアできるのは、最小限の処理で済ませられるようになる猛者だけなのだ。
「それでは行きましょう、まだまだ敵は沢山います」
「は、はい、頑張ります!」
最初のコメントを投稿しよう!