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珍しく華が夜来た。別にセックスとか、そんなんじゃないから、ほら飲め。僕はそう言って、越乃寒梅を差し出した。
華はたじろぎながら、それを飲んだ。
あ、花が開いた。
彼女はみるみる美しい顔のラインを描き出し、大きな瞳を宿し、カワウソのような小さな口を見せ、綺麗な容貌を見せた。
「おい、華、お前美人になってるぞ」
「だから嫌だったの、わたし夜になるとそこそこ綺麗になっちゃうの!」
贅肉がみるみるなくなり、痩せていく。まるでモデルさんみたいだ。
「どっちが本物のお前?」
「どっちが本物だと思う?」
「分からん」
「どっちでいてほしい?」
僕は悩んだ、なんかデブの華を見慣れているし、なんか変に愛嬌があったしなー。
「お前にまかせる」
「よし! やっぱりあなた。いつもこの姿でいる」
「いや、いい」
「へ?」
「デブのままでもいい。こんな神秘的なことが起こるとは、人生も捨てたもんじゃないなあ」
「変なの、わたしと付き合う男性、いつもこの姿でいろって言うのに」
「僕もブスだし、いいよ。こんな堕落もの、よく好きになったな」
「わたしね魂を見ることが出来るの。それであなたの才覚が花開くのを見たの。あなたのIQ相当高いし、必死で勉強すれば、弁護士にだってなれる。そう思ったの」
「へーなってみるか。みとけ、華」
そう言って僕は日本酒四合をいっき飲みして、どうだ! と言った。
「かっこ悪い」
僕は笑った。
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