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私はずっと身の丈に合わない生き方をしていたんだ。
「私は私のやり方で」
「そう。あなた自身で」
届かないはずだ。真似していただけで自分では何もしていなかったのだから。
「先生はどうやって歩いてきたんですか?」
「私のを聞いちゃったら、あなたに影響しちゃうでしょ?」
「確かに」
私はすごいと思った誰かにすぐ影響されてしまう。よく見てるなあ。
「湊崎先生は本当にすごいですね。昔からそうだったんですか?」
「私もいたよ。先生になるきっかけをくれた恩師がね」
「この学校に?」
「ううん。出会ったのは大学のとき。その先生に出会ってなかったら今頃どうなってたか」
「どうなってたんですか?」
「さあ?あてもなく生きてたからねえ」
「先生にもそんな時期があったんですね」
「まともな人間になれない、ひねくれ者だったからさ」
「意外です」
意志は次の世代へと受け継がれていく。
『いつまでもういない人ばかり見ているつもりなの?』
本当は認めたくなかっただけなのかもしれない。
もうどこにもいないって認めてしまったら、本当に消えてしまいそうで。一緒に過ごしてきた日々も、その思い出も、私の中からすべて。
だけど、もういいや。
時間は常に進み続け、未来に成っていく。生きている人にはみんな平等に。
「先生も同じ人間だったんですね」
「私のことどう見えてたわけ?」
別に忘れるわけじゃないよ?
ただ進むだけ。私が今いる場所から先に、見上げていた場所よりも高く。
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