3年目

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 私はずっと身の丈に合わない生き方をしていたんだ。 「私は私のやり方で」 「そう。あなた自身で」  届かないはずだ。真似していただけで自分では何もしていなかったのだから。 「先生はどうやって歩いてきたんですか?」 「私のを聞いちゃったら、あなたに影響しちゃうでしょ?」 「確かに」  私はすごいと思った誰かにすぐ影響されてしまう。よく見てるなあ。 「湊崎先生は本当にすごいですね。昔からそうだったんですか?」 「私もいたよ。先生になるきっかけをくれた恩師がね」 「この学校に?」 「ううん。出会ったのは大学のとき。その先生に出会ってなかったら今頃どうなってたか」 「どうなってたんですか?」 「さあ?あてもなく生きてたからねえ」 「先生にもそんな時期があったんですね」 「まともな人間になれない、ひねくれ者だったからさ」 「意外です」  意志は次の世代へと受け継がれていく。 『いつまでもういない人ばかり見ているつもりなの?』  本当は認めたくなかっただけなのかもしれない。  もうどこにもいないって認めてしまったら、本当に消えてしまいそうで。一緒に過ごしてきた日々も、その思い出も、私の中からすべて。  だけど、もういいや。  時間は常に進み続け、未来に成っていく。生きている人にはみんな平等に。 「先生も同じ人間だったんですね」 「私のことどう見えてたわけ?」  別に忘れるわけじゃないよ?  ただ進むだけ。私が今いる場所から先に、見上げていた場所よりも高く。
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