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生きることは残酷で、一番難しい。
傷ついて、何度も自分をすり減らして、消えたくなっても生きないといけない。いろんな罪の償い方があるけど、これが一番難しい。
『授業始まるよ?教室に戻って』
ヒロとは違うクラスになってしまった。同じ教室にいても話すことはないけど、どこか寂しい。友利さんも、田中さんも同じ教室にはいない。
「起立!礼」
時間がゆっくりと進む。
教科書に載る偉人のように生きた証がどこかに刻まれるのなら、生きた意味もあると思えるだろう。
本当は分かってるはずなんだ。
生きた証が刻まれるから生きるんじゃない。ちゃんと生きた人たちの生きた証がどこかに刻まれる。教科書に、歴史に、瞳に、記憶に、心に。
『やっぱり君たちは似てる』
今までの人生を無下にしてきた代償だ。自分の物語だったはずなのに、記憶から抜け落ちていく。
「次の授業なに?」
「さあ、知らね」
誰もがきっと人生の大半を適当に生きてる。一生懸命に生きてばかりいたら疲れてしまうから。走って、歩いて、立ち止まって、振り返って、人それぞれだ。何をしていようとその人にとっては歩みだ。
『あ、平原さん』
友利さんがこっちを見て微笑みかける。少し前は変わって見えた友利さんも、友利さんであることに変わりない。友利さんなりに人生を歩んでいる。
『やー』
今度は田中さんが手を挙げながらやってくる。田中さんはずっと変わらないままだ。
「久しぶりだね」
私もこの二人と出会って少しだけ変わった気がする。本当に少しだけかもしれないけど、歩めるようになった。
『また今度、ゆっくり話したいね』
『ねー』
振り返ると、少しだけ足跡がついているような気がした。
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