恋する資格と資格のない私

38/80
前へ
/80ページ
次へ
 私は、仕事帰りや休日は、役に立ちそうな金融の資格を取ろうと、カフェや家で勉強に没頭した。勉男の人と知り合いになったら、また傷つくかもしれない。そう思うと、飲み会や合コンにも行けなくなった。    ある日、私は、澪子に呼び出された。  あの一件以来、服装もメイクも落ち着いたものを好むようになった私は、シンプルなパンツ姿で待ち合わせに向かう。勉強の邪魔にならないように、髪の毛は結んでいることが多くなった。  澪子は、あのときよりも落ち着いているように見えた。私が感じた華やかなきらきらしたオーラはないが、落ち着いて凛とした気品を感じた。 「真由、久しぶり」  手を上げた澪子の指に指輪は、はまっていない。私はすぐに気がついたが、何も聞かなかった。  食事をしようと、この前も入ったパスタ専門店に入ると、澪子は、和風のパスタを頼んだ。 「クリームパスタってしつこいよね」  メニューを見ていた澪子は眉をひそめた。 「あれ?」  目を丸くする私に澪子が言った。 「私、結婚するのやめたの」  私は水をひっくり返しそうになった。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加