恋する資格と資格のない私

3/80
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
 私の身体を求める気持ちは、彼にとっては自然な欲求だから、私は受け入れないといけない。付き合ったら、人は抱き合い、求め合うはず。頭の中で理解しようともがいた。でも、いくらもがいても、私の気持ちは変わらなかった。  どうしても今までのように彼のことを思うことができなくなってしまった。彼のことを思っていたのに、ひたすらに彼が気持ち悪いと感じた。私は泣いた。大好きだと思っていた彼を受け入れられなかったこと。子どもの頃から感じていた違和感がついに現実のものとして、重くのしかかってきたこと。その二つが私を苦しめた。  私は、理解した。普通の恋愛をしてはいけないのだと。相手を傷つけることになるし、何より自分自身がつらくなるだけだ。幻想は幻想のままにしておこう。私は自分に言い聞かせ、彼とはずっと会っていない。それからずっと私は誰とも付き合っていない。恋愛することに資格があるとしたら、私には恋愛する資格がない。  
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!