恋する資格と資格のない私

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 私は順を追って話した。卒業旅行のとき、晶から、澪子に対して愛情を感じていたことを聞いたこと。でも、晶は澪子には言わないつもりだと言っていたこと。今、私の独断で澪子に話すことにしたこと。  だが、この前電車の中で見た晶の姿については、言わなかった。 「全然知らなかった。私、晶にひどいことを」  そう言うと、澪子はまた下を向いてしまった。私は、澪子が拒絶しなかったことに、ほっと胸をなでおろしていた。長年の友人から、好きだと言われたら、どう対応していいか分からず、拒絶してしまうかもしれない。そういう危惧を持っていたからだ。  また泣き出すのかと思って見ると、澪子は泣き出さなかった。 「ねえ。真由。私、たぶん晶に一番、嫉妬していたのかもしれない」 「どうして?」 「私、晶と同じような会社に就職して。晶は、頑張っているのに私はどうしても合わなかった。だから、頑張っている晶を見る度に、心に黒いものが湧き出てくるような気がした」    私は、澪子が結婚することに舞い上がり、何も考えずに発言していると思い込んでいた。澪子が自分たちに嫉妬しているとは思いもよらず、想像力の足りない自分が恥ずかしくなった。
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