恋する資格と資格のない私

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 私は澪子にかける言葉が見つからず、そのまま座っていた。澪子も同じだったのか、長い沈黙が続いた。  その日、結局、晶は現れず、夜遅くに、詩織がタクシーに乗って到着した。晶の様子を問うと、黙って首を振った。  澪子が晶と話がしたいといって、何回も電話をしたが、出なかった。私が送ったメールにも返信はなかった。楽しみにしていた旅行は、私たちの関係性を大きく変えてしまった。    それから、半年経った。私は、澪子と晶にずっと会っていない。それでも、私は何度か懲りずに、みんなで集まる提案をしていたが、二人から断られてしまった。    晶からは、短いメールが送られてきた。あのときの女の子と仲良くやっているから、心配しないで欲しいと。私は少しだけ肩の荷が下りた気がした。 詩織とは、何回か食事に出かけたけれど、箱根でのできごとは、何度話しても、解決策が見いだせなかった。あんなに仲の良かったのに、もう修復は無理なのだろうか。  心に二本の棘をさしたまま、私は仕事に没頭した。一本は、澪子と晶のこと。もう一本は普通の恋愛ができない自分に対するいら立ちだ。
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