恋する資格と資格のない私

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 彼と会わなくなってからも、男の人と二人で出掛ける機会は何回かあった。 会社の友人に連れられて行った飲み会の席で。たまにはと思って参加した合コンの席で。私は男の人と知り合いになって、二人で会う約束をした。食事に行くくらいならいいだろう。私はそう思って軽い気持ちで出かけた。   新しく知り合った人と話をするのは興味深かった。そして、何より男の人と二人っきりで歩いているというだけで気分が良かった。恋愛する資格のない私でも、付き合っているという気分くらいは味わいたかった。それでも、私は彼のときと同じように、あの熱い感情を私に向けられないように注意を払っていた。  私は人を好きになることはあるけれど、その相手から性的な欲望を向けられることに耐えられない。そう。私はセックスができない欠陥人間なのだ。私は相手の身体を求める気持ちがわからないし、これから先もわからない。そういう確信があった。  このことは、仲の良い友人にも誰にも言えなかった。私が普通じゃないことを人に話すなんて、それを認めるしかなくなってしまう。
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