恋する資格と資格のない私

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 その日は、居酒屋に男の人と二人でいた。その人は、話題が豊富で、いつも私を飽きさせることなく話ができた。何時間話をしても楽しくて、私はつい何回も会ってしまった。私には、人と付き合うことができないから、ただ会って楽しく話をできればいい。私が望んでいたのはそれだけだったのか自分でもよくわからない。でも、頭の隅で、男の人のことを好きにならないように頭の中でセーブしていた。  つまみはとっくになくなっていて、私の前に置かれたグラスにも、もう中身がほとんど入っていない。コースターは水滴に濡れて、ふやけてしまっている。男の人は、店員を呼んで私に飲み物を追加注文させようとした。  「次は何にする?」  私はテーブルに置かれた携帯を見て、 「そろそろ終電の時間だ。私、帰らなきゃ」  私は腰を浮かせかけた。 「今日は泊っていけばいいじゃないか。明日、休みだろ」  男の人はそう言うと、私を熱っぽい目で見つめた。
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