恋する資格と資格のない私

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 私の乗る方向の電車は、行ってしまったばかりで、電車を待つことになった。ホームでぼんやりと電光掲示板を眺めていると、友人の声にそっくりな声が飛び込んできて、思わず、振り返った。    私の目の前に立っていたのは、晶の姿。大学時代からの友人で、卒業してからも仕事の合間に会っている。私も晶も仕事で帰りが遅いことが多く、数か月に一回会えれば良い方だ。晶は、システムエンジニアとして活躍していて、休日出勤も多い。なんとか休みを合わせ、晶も交え友人四人で、旅行に行く約束をしていた。    晶は、ショートカットの髪に長身のすらっとした体躯の持ち主。服装もいつもパンツスタイルで、どこか少年のような中性的な印象を受ける。自分の思っていることをなかなか口に出さない部分があって、私にちょっと似ている。    その晶と向かい合う形で、小柄なかわいらしい女の子が立っていた。立っていたというより、晶に寄りかかっていたといった方が正しいだろうか。 「電車来ちゃうから乗って。気をつけて帰ってね」
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