恋する資格と資格のない私

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 晶は、女の子をそっと引き離すと、自然な流れで頬に軽く唇を合わせる。来た電車に女の子を乗せると、手を振った。女の子はうっとりとした表情を浮かべ、晶に向かって手を振っていた。その表情は、本当に大好きな人に向かって浮かべる顔に見えた。晶の表情はあまり見えなかったが、何となく悲しい背中に見えて仕方なかった。    晶も私と同じ方向の電車に乗るらしく、振り返り、私の方に歩いてきた。その表情があの女の子と全く違い、何かを耐えているようなつらい表情に見える。  晶を見つけた時点で、その場を離れるべきだった。そんな後悔も先に立たず、晶は私を見つけ、小さく「あ」の口の形を作った。そのまま晶はまっすぐ私に近づいてくる。 「真由・・・・・・。どこから?」  質問の意味がよくわからなくて、頭の中で反芻した。どこから見ていたのかという問いだと、やっとわかる。 「えっと。あの子かわいいね」  私は気づまりできちんとした答えを言うことができず、つい晶を茶化したような口調になってしまう。 「うん」 「付き合ってるの?」 「うん。まあそういうことになるのかな」
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