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ケイアス・ブラッドの選択
次元ホールを、無理矢理くぐり抜け、辿り出たところは、
王都である城の周りを囲う強固な城壁の一部分である塔の真上であった。
音も発てず、垂直の壁を縦に、横に、上に、下に自在に移動する男。
まるで、壁に張り付くいもりの様に、石壁に紛れるケアイスがいた。
思念を巡らし、城の中の状況をつかもうとするケイアス・ブラッド。
王の気配は見当たらない。
もしや、もう既に王は・・・。
王の後継者である、エルガネック皇太子の幽かなエネルゲが、
遥か地下深くに感じられる。
拘束され、幽閉でもされたか?
だが、そこまで単身乗り込むのは、危険だ。
今すぐに自分だけでは難しいだろう。
黒の軍の将、「白銀のマディナス」に、連絡を取り、
返事を待つか?思念の念波動を同じギルド派遣のニンジャに送るケイアス。
む、
その時、ここからかなり離れた西方のとある場所にある気配を感じ取った。
「これは?
皇太子の異腹弟、王が庶民の女に産ませたと言われている
幼き王子エルミーの気配。
何故、そのような場所に?」
数瞬の思考の後に、手足を凧状にした飛空体となったケイアス・ブラッドは、
エルミーのエネルゲを感じる場所へと、ひとり滑空していった。
西方にあると言われている沙漠、そして、その真ん中にあると言われている
謎の塔、モスピガーラを目指し。
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