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次の日、大きな黒い「船」に皆は列を作って、順番に乗って行くのを、私は木の上から見ていました。皆、それまでの喜びがどこかへ行ったように何だかぎこちない顔をして、乗りこんで行きます。
列の最後は、島の長でした。長は、国の人に抱えられゆっくりと船に近づきます。しかし、中ごろまで来ると、長はぴたりと立ち止まりこちらを振り返りました。周囲が怪訝な顔をする中、長は岸辺からじっと島を仰ぎ見ました。何をしている、と国の人が急かそうとした時、長はよく通る声で話し始めました。
「この島には先住民がいました。我々は帰る為に、一人残らず殺しました」
船の中にいる人達は、押し黙り、ただ俯いていました。
「しるしをたてる為に、沢山の木を切り倒し燃やしました。何年も繰り返し繰り返し……そうしている内に、この島はいつもその灰がまう様になりました」
その時、ひゅう、と一陣の風が私の髪を揺らすとともに、「ゆき」を運んできました。
「それでも、我々は帰りたかった。国に、我々を待つ人のもとに、どうしても帰りたかった」
睨みつけるように島を見ていた長の目には、悲しみとも、怒りとも違う感情が浮かんでいました。それから、どうしても、ともう一度絞り出すようにして言うと、深く頭を下げました。皆も長にならい、頭を下げるのを見ながら、私は笛を静かに吹きました。
波が踊り、木々がざわめき答える中、ゆきはただひらひらと降り落ちて、彼らの背を、白く染めていました。
島に舞い落ちる白いものを、彼らは「ゆき」と言いました。どこか悲しげにそう呼ぶのを聞いて、私はそれをゆきと呼ぶと知ったのです。
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