それぞれの芽吹き

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「こいつ甘党なの」 そう教えてくれた和真くんは、本日のコーヒーをスチームミルクのカスタマイズで注文していた。 どうやら、ブラックのまま飲むのは苦手なようである。 「中島さんと和真くんって、大学からの付き合いって言ってたよね、この前」 「あー、そうそう。学部が同じだったの」 「あ、北村、まさかあの話するつもりじゃ……」 「そのまさか」 話が見えなくて、中島さんと和真くんとの顔を交互に見比べた。 中島さんは焦った様子で、和真くんはニヤリと人の悪い笑みを浮かべている。 「別に話したっていいけどさ」 諦めたような口調で、中島さんはキャラメルラテを傾けた。 「一番最初のオリエンテーションの日にね、教室に入ったら何人か席に着いてて、自由着席かなって思ったら、ホワイトボードに座席表が貼ってあったんだけど」 和真くんがゆっくりと話し始める。
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