突然のファーストキス

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カタカタとキーボードを叩く音、忙しなく書類を捲る音、ひっきりなしに鳴る入電音。 いつものオフィスの風景。 「朝永(ともなが)さん、今、手空いてる?」 「あ、大丈夫です」 書類を作成していた手を止めて、顔を上げて返事をした。 「第2資料室に行ってJのラベルのファイル取ってきてもらえる?ごめんね」 「いえ、すぐに行ってきます」 先輩にお使いを頼まれ、1階奥にある第2資料室にやってきた。 いつも(ひと)()がない場所である。 「失礼します」 誰もいないだろうことを承知して、形式上、断りを入れてからドアを開けた。 「っ!!」 まさかの光景に、思わず息を呑んだ。棚にもたれかかり、睦み合っているのは同じ営業部の(しげ)()さんと、企画部の(さい)()さん。 茂野さんの片手は齊木さんの豊かな胸に、もう片方の手は捲れ上がったスカートの中にある。 「あら」 気付いて声を発したのは齊木さんだ。美人で仕事のできる、会社のマドンナ。長い前髪をかき上げた、ゆるやかウェーブが微かに揺れている。 「恭一(きょういち)さん」 「……あぁ」 何でもない風な顔をして、さっと手の位置が元に戻された。 「ごめんなさいね、驚かせて」 はだけた服をさっと直して、齊木さんは形のいい唇で微笑んで出て行った。
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